トランプとは何だったのか。解き放たれた差別主義と米国第一主義

 

前途多難な米国社会のリベラルな再建

米国社会が妄想的になる要因の第2が、フランセスも重視している白人人口の減少への苛立ちである。米人口調査局の予測によれば、ヒスパニック系を除く白人は2040年に1億9,500万人で辛うじて過半数の51.3%だが、これを最後に過半数を割り、45年には1億9,200万人で49.4%、50年には1億8,800万人で47.4%、60年には1億8,200万人で43.6%と、ひたすら減り続ける。図参照 

それだけでも白人たちがアイデンィティ危機に陥るに十分な条件だが、それに折り重なるようにグローバル化の下での伝統的な製造業の衰退、テクノロジー変革の波が襲い、「屈辱的な不平等、改善しない生活水準、よい仕事の喪失、当てにならない医療保険、穴だらけのセーフティネット、急速に変化する文化的価値観という大きな重荷」(フランセス)が何百万もの人々にのしかかり、アメリカン・ドリームを粉々に打ち砕く。

すると、とりわけ下層の白人の間では、この訳の分からない状態のすべてが「移民のせいだ」「壁を築け」と言われると「そうか、そうだったんだ」とたちまち気分が晴れて熱狂した。そのようにしてラスト・ベルトのペンシルバニア、ウィスコンシン、ミシガンの3州で始まったトランプ・ブームであったというのに、今回その3州ともバイデンが取り返した。つまり4年前にトランプは口から出任せのデマゴギーを振りまいただけだったことが立証されたのである。

それにしても、バイデンの総得票数は史上最高の7,808万票であったけれども、トランプもまた7,273万票というオバマを大きく上回る票を集めた。米国社会の半分を覆う巨大な妄想は一向に解けておらず、むしろ社会の亀裂はさらに深まるのかもしれない。バイデンに多様性を認め合う理性的なリベラルの原理で社会を立て直すだけの力量があるのかどうかは、選挙戦を見る限り未知数である。

とりあえずトランプをホワイトハウスから追い出せそうなのはバイデンの偉大な業績だが、彼の下で米国が立ち直れるのかどうかは分からない。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年11月16日号より一部抜粋・文中敬称略)

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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