高校生の25人に1人の衝撃。若者が家族を介護する日本の厳しい現実

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やむにやまれぬ事情で家族の介護を担う、ヤングケアラーと呼ばれる18歳未満の子供たち。先日埼玉県が行った調査では、実に高校生の25人に1人がそうした状況下にあることが判明しました。彼らを救う手立てはないのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では著者で健康社会学者の河合薫さんが、イギリスで展開されている支援策を紹介するとともに、我が国における家族全体を捉える調査の必要性を訴えています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「25人に1人」家族を介護する子供たち

埼玉県が県内のすべての高校2年生、およそ5万5,000人を対象に「ヤングケアラー」の調査を行なったところ、25人に1人の高校生が家族の介護を担っていることがわかりました。

ヤングケアラーとは「介護を担う18歳未満の子供」を指す言葉です。まだ、「子供」なのに、病気や障害をもつ親の介護をしたり、両親がさまざまな理由から子育てに専念できず妹や弟の世話をしています。

埼玉県の調査では、現在または過去に「家族に代わって洗濯や料理などの家事をしている」「家族の身の回りの世話をしている」など10の項目をあげ尋ねたところ、全体の4.1%、25人に1人が「ヤングケアラー」に相当し、そのうち35%が、「毎日介護を行なっている」ことがわかりました。

高校2年生といえば、青春真っ只中です。箸が転がるだけでも笑いこけるような子供たちが、家族の介護に追われている。中には、祖父母に十分な預貯金がなく、家族の誰かが介護費用を捻出しなければならなくなったとき、稼ぎのいい親が働きに出る一方で、稼ぐ力のない孫が親から渡されたお金だけで介護を担うことを余儀なくされる「老孫介護」も存在します。

大人でも大変な介護を、「家族のため」とはいえ、友達との時間もままならずにこなしているだなんて。想像するだけでも胸が痛くなります。

「ヤングケアラー」の存在が、日本で注目されるようになったのは、2010年代以降ですが、欧州では1990年代から問題視され、特に英国ではこの問題に積極的に取り組んできました。英国では、日本同様に在宅福祉を主軸とし、介護も含めたケアの担い手の核は、家族、友人、近隣の人など「自立」を中心とした地域ケアで、「公助」は全体のケアのごく一部と位置付けられていました。

ただ、日本とは異なり、ケアを担う人=介護をする人も同様に支援されるべき人と位置付けた。ここは日本との大きな違いです。

そして、「ケアを担う人のためのケア」に積極的に取り組む中で、学業の時間を削り、友達と過ごす時間もとれず、家族の世話や介護をしている「若い子供たち」が多くいることが確認されたのです。

英国が2003年に実施した全校調査では、ヤングケアラーの平均年齢は12歳だったと報告されています。小学6年生や中学1年生の、まだ「子供」が家族のケアをしていたのです。

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