高校生の25人に1人の衝撃。若者が家族を介護する日本の厳しい現実

 

そして、ヒアリングを中心とした研究を進める過程で研究者たちが痛感したのが、ヤングケアラーの精神的ケアをどんなに外部の人間がしても、彼・彼女たちは家に帰れば「家族のケアをたった一人でしなくてはならない」という厳しい現実から逃れられることができないってことでした。

つまり、ヤングケアラーの代わりがいないのです。家族がいないのです。いたとしても、「若い」「稼ぎがない」ということで介護を押し付けられてしまうのです。ヤングケアラーの家庭は、経済的困窮と結びついていることが多いため、家族を包括的にサポートしないことには、子供達の負担が減ることはありません。一見社会的しがらみの少ない子供が、「家族の犠牲」になってしまうのです。

そこで英国では、ヤングケアラーたちの支援には法律を変えることが重要だと考え、2014年に「2014年子供と家族に関する法律(Children and Families Act 2014)」を成立させ、その中に「ヤングケアラー(18歳未満)」の項目を設けました。加えて、18歳を過ぎても介護から抜け出せず、就職できない子供たちが多いことから、「2014年ケア法(Care Act 2014)」という成人を対象とした法律も成立させ、その中で18~24歳までを「ヤングアダルトケアラー」と定義し、彼らに支援がなされるようにしました。

こういった英国の取り組みの前提となっているのは、「どんな福祉サービスも、子供の過度なケア役割に頼ってはいけない」という考え方であり、支援のあり方も家族全体を対象にしたものになっています。

しかし、どんな法律もどんな取り組みも、社会が「その問題」を知らないことには機能しません。他のコラムでも「ヤングケアラー」問題は書いていますが、何度でも書き続けます。

日本では政府がやっと重い腰を上げ、12月に全国の教育現場を対象にした初の実態調査をする予定ですが、英国の取り組みを参考に、家族全体を捉える調査も行い、支援のあり方を議論してほしいです。

みなさんのご意見、お聞かせください。

image by: Shutterstock.com

河合 薫この著者の記事一覧

米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』 』

【著者】 河合 薫 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

print
いま読まれてます

  • 高校生の25人に1人の衝撃。若者が家族を介護する日本の厳しい現実
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け