そして、ヒアリングを中心とした研究を進める過程で研究者たちが痛感したのが、ヤングケアラーの精神的ケアをどんなに外部の人間がしても、彼・彼女たちは家に帰れば「家族のケアをたった一人でしなくてはならない」という厳しい現実から逃れられることができないってことでした。
つまり、ヤングケアラーの代わりがいないのです。家族がいないのです。いたとしても、「若い」「稼ぎがない」ということで介護を押し付けられてしまうのです。ヤングケアラーの家庭は、経済的困窮と結びついていることが多いため、家族を包括的にサポートしないことには、子供達の負担が減ることはありません。一見社会的しがらみの少ない子供が、「家族の犠牲」になってしまうのです。
そこで英国では、ヤングケアラーたちの支援には法律を変えることが重要だと考え、2014年に「2014年子供と家族に関する法律(Children and Families Act 2014)」を成立させ、その中に「ヤングケアラー(18歳未満)」の項目を設けました。加えて、18歳を過ぎても介護から抜け出せず、就職できない子供たちが多いことから、「2014年ケア法(Care Act 2014)」という成人を対象とした法律も成立させ、その中で18~24歳までを「ヤングアダルトケアラー」と定義し、彼らに支援がなされるようにしました。
こういった英国の取り組みの前提となっているのは、「どんな福祉サービスも、子供の過度なケア役割に頼ってはいけない」という考え方であり、支援のあり方も家族全体を対象にしたものになっています。
しかし、どんな法律もどんな取り組みも、社会が「その問題」を知らないことには機能しません。他のコラムでも「ヤングケアラー」問題は書いていますが、何度でも書き続けます。
日本では政府がやっと重い腰を上げ、12月に全国の教育現場を対象にした初の実態調査をする予定ですが、英国の取り組みを参考に、家族全体を捉える調査も行い、支援のあり方を議論してほしいです。
みなさんのご意見、お聞かせください。
image by: Shutterstock.com