顔に泥を塗られた過去。バイデン大統領が韓国の文政権を許さぬ理由

 

予想される硬軟使い分けた対策

最初にトランプ政権時代に悪化し、緊張が高まった中国との関係です。

中国・北京の分析によりますと、「バイデン氏は本当にGood guyだが、実際には実利主義者で、トランプ大統領以上に面子を重んじる傾向があることから、恐らくトランプ氏よりも手ごわいだろう。もし、ずっと大統領で居続けることが出来れば」との内容が伝えられてきました。

バイデン氏といえば、民主党内でも最も原理原則を重んじ、特に人権問題や民主主義の価値については非常に尊重し、その実現に邁進するという分析ができます。

また副大統領として8年間コミットしてきたオバマ政権で、あまりにも中国との融和と協調を重んじすぎたため、中国に安全保障面でアジア太平洋地域での覇権を奪われそうなところまでアメリカを後退させたという失敗を認識し、それが“トランプ大統領をもってしても”取り戻せなかったことを認識しているため、対中国はハードライナー外交になるだろうとの見方が強くなっています。

彼が外交・安全保障の陣営に据えた閣僚たちの顔ぶれからも、中国対策は非常に厳しく、米中関係の改善を望む声には応えられないと見ています。

しかし、実利主義であるバイデン氏の特徴から、対中国ではon/offを切り替えた対応を取るのではないかと見ています。例えば、メディアでも語られるように、協力が望めそうな気候変動対策や金融、WHOを通じた国際保健衛生などの分野では協調を図りますが、彼の原理原則が絡む香港・台湾を巡る安全保障と人権問題、チベットやウイグルに関する人権問題、そして中国の太平洋への野心が見え隠れする南シナ海問題などの安全保障分野では、恐らくトランプ政権以上に対峙・対決するという、硬軟使い分けた対策をするのではないかと思います。

この対策を欧州各国から見ると、トランプ政権よりは現実的であるとして評価するのではないかと考えます。ただ、トランプ政権時の対応ゆえに明らかになってきた中国の野心については警戒を募らせ、【中国包囲網】の強化という方針には乗ってくるでしょう。

しかし問題はこの【中国包囲網】がカバーする領域が、米・欧間では認識が異なることでしょう。これまで実利主義といえばEUの専売特許でしたが、トランプ政権の4年間で激しさを増した米中対立の陰で明らかになった【中国のTrue Color】を理解した欧州各国は、皮肉にも、トランプ大統領が推し進めてきた経済面や情報セキュリティ、事件問題、そして安全保障面という、ほぼ全領域において対立路線を意味するようになるでしょう(といっても、EUが大好きな気候変動対策については中国と協調姿勢を取るでしょうが)。

そして一帯一路が、アジアにおける中国の影響力拡大のみを意味するのではなく、中国から欧州に伸びる一体を中国による支配圏にしたいという目的を持つことに気付き(最近明らかになったゴールデンスパイ問題はドイツを硬化させました)、欧州は対中政策に苦慮し、地政学的に中国と本格的に対峙することをためらっています。

そのような中でバイデン氏のアメリカが同じように全面的な対峙を選ばないだろうと思われます。その時に包囲網の結束に綻びが出かねないなあと懸念しています。

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