顔に泥を塗られた過去。バイデン大統領が韓国の文政権を許さぬ理由

 

必ずしも友好的とは言えない中東各国の反応

アジア以上にややこしく、かつバイデン政権にとってチャレンジングなのが中東政策でしょう。

まず頭に浮かぶのがイラン核合意への復帰をするのか否かですが、トランプ大統領の最後のあがきなのが嫌がらせなのかは分かりませんが、イスラエルも使いながら、イランへの圧力をかけており、それを受けてイランが態度をより硬化させていることで非常に困難になっていると言えます。

11月27日のモフセン・ファクリサデ(核科学者)の殺害(一説ではイスラエルによる無人自動兵器が用いられた)によってイランを巡る中東情勢は緊迫しています。

それを受けてイラン国会も12月2日にウラン濃縮推進のための法を成立させて、イラン核合意への復帰を暗に迫るべく、英仏独露中というアメリカを除く核合意当事国にアメリカ(バイデン)の説得を迫っています。それが2か月以内に叶わない場合(これはかなり難しいデッドラインですが)、イランが法に依って推し進める方策は、バイデン政権の核合意への復帰条件のレッドラインを超えることになり、アメリカは政権が変わってもイラン核合意に戻るきっかけをつかめないことになります。バイデン政権は、オバマ政権の成果でもあり、反トランプのシンボルでもある核合意に復帰しようと画策するでしょうが、以前お話しした国内での超党派での対イラン感情に鑑みても、それはかなり困難な決断となるでしょう。

それでほくそ笑むのがイスラエルとサウジアラビア、そしてトランプ政権の仲裁の下、イスラエルと国交樹立したUAEやオマーンといったスンニ派アラブ諸国でしょう。共通する利害として【イランの態度の硬化】と【核合意の有名無実化】が挙げられますが、その狙いは、バイデン氏が正式に大統領に就任する前に固定化されてしまいそうです。

その兆候は、公式には認められていませんが、イスラエル(ネタニエフ)とサウジアラビア(モハメッド・ビン・サルマン皇太子)とが秘密裏に介し、対イラン協調路線と反バイデンの姿勢の確認をしたと言われていることからも見えます。

それは、両国ともバイデン氏が取り得る中東政策に大きな警戒心を抱いているからですが、イスラエルとしては、念願のエルサレムの地位向上(アメリカなどの大使館が移転されてきたこと)や、トランプ大統領が演出したイスラエルとアラブ諸国の融和が有名無実化されるのではないかとの懸念があり(バイデン氏の外交姿勢では、人権擁護の観点からもパレスチナ人の権利を尊重する向きがあり、またエルサレムへの米大使館移転にも反対しているという事情あり)、サウジアラビアなどのスンニ派諸国は、イラン・シリアなどにまたがるシーア派の三日月地帯への対応において、【アメリカは本当に(トランプのように)スンニ派の味方かどうか】定かでないとの思いが強いと言われています。新政権の外交担当者は【これはトランプ大統領の亡霊だ!】と非難していますが、バイデン新政権が直面する中東各国の反応は、必ずしも友好的とは言えないようです。

では歴史的同盟と言われる大西洋の向こう側、欧州との関係はどうでしょうか。トランプ外交の一つの特徴はNATOを材料にした欧州各国への威嚇であり、欧州を“軽視”するというものだと理解されていますが、同盟重視を謳うバイデンはどこまで欧州を尊重するでしょうか?

トランプ政権の4年が、欧州にとって悪夢だったとすれば、それはロシアの脅威に対抗する軸であるはずのNATOの弱体化と分裂を招いたこと、そしてトルコに暴れさせるきっかけを与えたことでしょう。そして、その力の混乱において、中国とロシアが付け込み、EUの分断を図る余地を与えてしまったことです。

ロシアに対しては、バイデン氏自身がずっと反ロシアで、「ロシアはずっと脅威」であり「トランプはプーチンの犬」と公言するほどですから、欧州各国と比べてもバイデンのアメリカの対ロ強硬策は際立つでしょう。トランプ政権が課した対ロ制裁は強化されるでしょう。新START(2021年2月に失効)の延長の可能性をにおわせ、対ロカードとしてモスクワに迫り、多くの外交フロントにおいてロシアの妥協を探るでしょうが、対ロシア強硬派というTrue Colorに変更はないと思われます。

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