顔に泥を塗られた過去。バイデン大統領が韓国の文政権を許さぬ理由

 

さらなる国際情勢の混乱を招きかねないバイデン政権

バイデン氏が自身のこれまでの外交姿勢を大きく変えるだろうと思われるのが、トルコ・エルドアン大統領への対応です。オバマ政権時代にはNATOの同盟国としてエルドアン大統領を持ち上げてきた過去もあるのですが、トランプ政権時代に、ロシアに近づいてS400の導入に踏み切ってアメリカに揺さぶりをかけたことを、「同盟の結束を乱すものは罰する」との発言からも見えるように、バイデン氏は許しておらず、大統領選中には「エルドアンは独裁者」と公然とこき下ろし、「一国主義は許さない」と言い放つほど、今、トルコへの感情はネガティブです。

しかし、これを額面通りに取るか否かは、政権発足後に見えてくるでしょうが、私は「EUとトルコとの数次にわたる対立を受け、トルコへの圧力と非難を対EU外交カードとして用い、トルコに対してはラストチャンスとしての踏み絵(アメリカかロシアか)を迫る方針」だろうと考えています。

ゆえに、EUサイドが熱烈に(トランプへの反感も振れ幅を大きくしている要因ですが)バイデンにラブコールを送る中、そのラブコールにバイデンのアメリカが思うように答えてくれない可能性が大いにあり、結果、欧州各国は「もうGrand-Atlantic Allianceは戻らない」と、新たな外交政策を立てるかもしれません。その兆しは、欧州自立主義を掲げるフランス・マクロン大統領の姿勢にも見え隠れしますが、盟友でありライバルであるドイツ・メルケル首相が来年秋に引退することもあり、よりマクロン大統領の影響力が、一時的にでも(注:彼も2022年夏に選挙あり)強まることで、米・欧関係の図式に大きな影響を与えることになるかもしれません。

駆け足で、今後、バイデン新政権が対応しなくてはいけない国際情勢について触れてみましたが、【実際にバイデン氏本人が大統領としてどこまで直接対応“できる”かは未知数】です。

冒頭にお話しした【彼の仕事はトランプ氏に勝った時点で終わった】というのは極端かもしれませんが、史上最高齢での就任となり、認知機能も怪しく、かつ失言癖が懸念されるバイデン氏が4年、リーダーの座に座っているとは、仲間の民主党重鎮でさえ考えていない模様です。そうなると副大統領になるカマラ・ハリス氏の力量が試されるのですが…彼女には外交的な実績はありません。

バイデン・ハリス陣営の勝利に沸く国際情勢ですが、2021年以降、私たちが直面する国際情勢の混乱は、もしかしたら、この政権がさらにかき回すようなことになるのかもしれません。

皆さんはどうお考えになりますか?

あ、最後に念のため申し上げておきますが、私はトランプ支持者ではありませんし、バイデン氏のことは、お会いした際の印象から、好きですが、今回はあくまでも、可能な限りニュートラルな立場から書いてみました。

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