米富裕層で業界平均を大きく上回ったトヨタの販売回復力
特に、回復を支えたのが、アメリカでの需要。北米の工場は3月下旬から約50日間、コロナ禍で稼働を停止していましたが、需要の戻りは想定より強かったようです。
比較的単価が高く、利益率も高いピックアップトラックや多目的スポーツ車(SUV)などの大型車が好調です。トヨタSUVの「RAV4」やレクサスブランド車などの販売が好調で在庫が逼迫している状態となり、増産対応を急ピッチで進めています。
トヨタは世界販売台数の約3割を北米が占めており、そこでの収益改善は全体の業績を底上げしているのです。
しかし、北米市場については、先行きが安定して見通せる状況ではないでしょう。
経済が本格的に立ち上がらなければ、富裕層による瞬発的な消費が一巡してしまうことで、自動車市場も再び低迷状態に戻りかねない、といた懸念点があります。
中間決算発表に“初めて”登場した豊田社長
6日の中間決算に豊田社長が出るのは初めてのことです。トヨタの社長が年度の途中で決算説明会に出るのも2002年以来。今回の社長出席は“異例”とも言えます。
ここには、豊田社長の並々ならぬ思いが表れていると捉えることができます。
「自動車が日本経済のけん引役になろう」
豊田社長いわく、「私は方向性を示しただけですが、すべては、その方向に向かい動き続けた現場の力だと思っております。この動きは、トヨタにとどまらず、日本自動車工業会をはじめとする5つの業界団体へと広がりました。自動車は波及効果が非常に大きい産業です。雇用は550万人。納税額は約15兆円。経済波及効果は2.5倍になります」との思いを語っています。
今まで、多くの名言を残してきた豊田社長。
- 「意志ある踊り場」
- 「ものづくりは、人づくり」
- 「過去に時間を使うのは自分で終わりにしたい」
今回の中間決算では“トヨタフィロソフィー”という言葉を披露しています。
グローバルで37万人となっている従業員らで共有できる「トヨタフィロソフィー」を定めて、トヨタの使命を『幸せの量産』と定義。
トヨタグループの創業者である豊田佐吉氏や、自動車に進出した豊田喜一郎氏がつくりたかったのは「商品を使うお客様の幸せであり、その仕事に関わるすべての人の幸せだった」との視点に基づいて定めたといいます。
「利益を出せない会社は未来への投資ができない」とも話す豊田社長。
世界では環境規制の厳格化が進み、脱エンジン車の流れも加速しています。未曾有のコロナショックの中でもトヨタは底力を見せることができましたが、真の実力はコロナ後に試されることになるでしょう。
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