下請けに訴えられるアップル、感謝されるトヨタ。違いは何か?

shutterstock_1717116979
 

大手企業が下請けの中小企業に対して無理難題を押し付ける─。ドラマでもよく見受けられるシチュエーションですが、実際に米アップルが訴えられたという事案もありました。今回のメルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では著者の浅井良一さんが、ビジネスにおけるアップルとトヨタの企業比較、そしてドラッカーの言葉を引きながら協力会社と大手企業の関係について論じています。

成果を適える「鬼に金棒」 泣く子と地頭には勝てぬ

いつものことなのですが、不意にこんなことが頭に浮かびました。それは、事業において無敵となる「鬼に金棒」とはなんだろうかで。つらつら考て、成功を手にした名経営者の言動などから総合的に類推してみて、そこで浮かんで来るのが二つのキーワードです。一つは“ビジョン”であり、もう一つは“よき人材”というものです。

「なぜ二つのキーワードなのですか」なのですが、この二つは、時代の欲求を切り拓いて多くを適えて、それによって企業に大きな「成果」もたらしめるための“源泉”であるからです。なんとなれば“ビジョン”がなければ「成果」は見えず、そして“よき人材”の参画がなければ「成果」に至ることはないからです。

「鬼に金棒」の由来を調べてみるとこんな風に書かれています。

鬼に武器を持たせた様子を言い表したことわざです。強い者は丸腰でも充分強いのですが、武器を持つとさらに強くなることは当然で、武器を持つ者が鬼であればなおさらです。

とあります。そこで事業では、それがどんなふうなものかを考えてみたのです。

ところで世間一般での解釈は「泣く子と地頭には勝てぬ」の様で、中小企業に取引上の優位さを笠に着て、無理難題を押し付ける大手企業こそが「鬼に金棒」そのものだとされているようです。

少し前のことですが、中小企業の「島野製作所」が度重なる過酷な条件変更にアメリカ「アップル」社を訴えるという事件がありました。訴状は独占禁止法違反と特許権侵害とういうもので、有利な地位を乱用しての一方的な受注量の削減や値下交渉さらの技術流出を理由とします。結果的には敗訴して「アップル」が全面勝訴となったのでした。

少し余計なことですが「アップル」が全面勝訴した背景は何なのか、裁判はもとより争いごとなので、多くの有能な弁護士を擁している「アップル」が契約の段階からして準備万全なのは想像に難くありません。

これは特に珍しいことではなく、特にアメリカではこのことをディール(駆け引き)だとして常套な手腕と解されているようです。2011年にアップルのCEOになったティム・クック氏は、調達等で辣腕を振う実務家で“下請け”への価格交渉は厳しいものがあります。これをして「鬼に金棒」といえば、それなりに納得されるでしょうか。

print
いま読まれてます

  • 下請けに訴えられるアップル、感謝されるトヨタ。違いは何か?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け