下請けに訴えられるアップル、感謝されるトヨタ。違いは何か?

 

話をここから始めるのは、どうも世間一般で語られるこの“認識”についてあらためて考えたいのと、そうでなくて「すべての人を幸せにする」とする「価値観」の普遍性を探りたいからです。もとより「事業をして“成果”を得さしむ」ことは、厳しいことです。けれど「厳しさ」は「幸せ」と相反するものではないはずです。

アップルが“宇宙に衝撃を与える”商品を、可能な限りコスト・ダウンしてより廉価で提供しようとするのはビジネスとしての基本です。ただ、そのために下請会社への圧力をディールとするのはいかがなものか、なぜなら貴重な経営資源を摩滅させててしまうからで、もっとスマートで思慮深い「鬼に金棒」の振るい方があるはずです。

スティーブ・ジョブズは“イノベーション”により顧客が想像もしなかった革新的な商品を連続して世に出して「市場創造」しました。顧客が予想もしなかったより良きものを、より使い勝手がよく、より高い品質で、より安くは“マーケティング”の基本テーマです。それは「飛びぬけた“才能”とコラボレーション」してできたことです。

ただ、そこからの先の製造においての“サプライチェーン・マネジメント”については“宇宙に衝撃を与える”ものではなくて、実務家が確かな手ごたえで行う陳腐化した“旧スタイル”のままで、蛇足的に言うと、そこには“ビジョン”はなく“よき人材”とのコラボレーションもなくて“金棒”は持っていないとなるようです。

ドラッカーは企業の衰退に関して「企業が衰退する最初の兆しは、意欲ある人材に訴えるものを失うことである。」と言っています。魅力のある“ビジョン”こそが「意欲ある人材の拠り所」です。

ジョブズは、突き抜けた“ビジョン”でもって、突き抜けた“有能な人材”をかき集めて、飛び抜けた“もの創り”を行いました。ジョブズ亡き後も、突き抜けた“ビジョン”の照返しで繁栄しています。ただ、後継者はその恩恵の回収に必死になっており、意欲ある人材が去り始めたらならば、その栄光はたそがれ始めるのでしょうか。

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