開戦か、大恐慌か。世界で新型コロナが爆発させた怒りのマグマ

 

世界中に拡大した「別のウイルス」による感染

そしてコロナ“ウイルス”によるパンデミックは、別の“ウイルス”による“感染”を世界中にまき散らしました。それはICTの裏を突くコンピューターウイルス(ランサムウェア、スパイウェアなど)の急速な広がりと、攻撃の激化です。コロナ禍での人々の心理的不安の隙を突き、それを助けるかのようなメールや方法を記載したと謳うファイルを送り付け、どんどん個人情報を抜き取るという手段だったり、企業や政府機関などの情報漏洩を引き起こすか、誤作動を引き起こさせたりして、機能をマヒさせるという状況です。

これは安全保障上の危機を引き起こす恐れが高いですし、世界的に多額の損失を出すことに繋がってしまい、ただでさえコロナで痛めつけられた経済・社会活動をさらに悪化させかねないという懸念をはらんでいます。

これが見事に国際情勢に悪影響を与えたのが、コロナ世界における紛争の増加です。その多くに地域大国で、世界的プレイヤーの座を狙いたいトルコ、アメリカが忌み嫌うイラン、その永遠のライバルであるイスラエル、そして中国、ロシア、米国…数を挙げればキリがない大国がすべて、通常兵器・核戦力に加え、サイバー攻撃を加えたハイブリッド型の戦争を本格化させたことが分かってきています。その多くは無人攻撃機(ドローン)による暗殺や爆撃という無人兵器の多用というものや、強力かつ巧みに作られたウイルスを利用して相手の機能の心臓部を止めてしまうサイバー攻撃に分類されます。

それらの“ウイルス”や無人兵器が、私も調停努力に関与することになったナゴルノカラバフでの紛争、リビアでの衝突(EU、ロシア、トルコが後ろ盾としてこのような兵器を投入しているらしい)、イランの要人の暗殺、イランによる周辺国攻撃のための策(ドローンとサイバー)、じわじわ衝突の機運が高まるロシアとウクライナ、ジョージア、モルドバなどでも無人兵器とサイバーの併用というhybrid戦争が投入されそうです。

コロナの下、技術革新が一気に進んだことにすでに触れましたが、そのネガティブな結果がこのようなところに出ています。

そしてそれらの戦争・紛争のほとんどが、コロナパンデミックの下で明るみに出た社会的な不条理、特に広がる一方の貧富の差、人種による扱いの違いの露呈などを機に、各国でこれまでに溜まっていた怒りのマグマが一気に爆発したと言えると思います。

それはナゴルノカラバフ、リビア、エチオピアのティグレイ州での内紛、レバノンでの無政府状態、シリアとトルコのイドリブ県での戦い、そして今、微笑みの国タイで激化して収束の見込みが立たない民主化デモ…これらはすべて“不満の拡大”から起きていると言えます。

それを正当化して、自らの権力基盤を強化しようとするリーダーの多さも気になります。

これらの背景にある一因は、コロナのパンデミックによって、いわゆる大国が大混乱を経験し、国際情勢へのコミットメントどころではなくなった隙に、地域大国であるトルコやロシアが周辺国を中心にちょっかいをだし、収まっていた争いの種をほじくり返して、ここぞとばかりに勢力圏の拡大を図るという動きに出ているからです。ロシアもトルコも世界から非難され、また互いに直接対決をしつつも、中国と並んで、着実に勢力の拡大もしくは復権を遂げようとしています。中国はともかく、ロシアやトルコと言った地域の大国の台頭は、今後確実に国際情勢に大きな混乱と変革をもたらすことになるでしょう。

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