開戦か、大恐慌か。世界で新型コロナが爆発させた怒りのマグマ

 

コロナのパンデミックが間接的にもたらした負の変化

しかし、直接的な被害のみならず、コロナのパンデミックは間接的に負の変化ももたらしました。

直接的には、12月24日現在、世界で感染した人の数はもうすぐ8,000万人に届きそうで、死者数も公式には170万人ほどになっています。感染者数については、まだ診断されていない“感染者”が少なくとも5億人はいるのではないかと言われ、また死者数についても、1月のアメリカでのインフルエンザ大流行による2万人規模の死者を含め、コロナによる死亡として記録されていなかった死者数を入れると、恐らく数十万人から100万人単位で振れるという見解が、非公式ではありますが、WHOや各国の公衆衛生・厚生関連の機関で囁かれています。

現在、感染の第3波の真っ最中で、世界中で感染者数・死者数共に増えており、その数は衰えを知りませんし、今週には英国で、より感染力が強い変種のコロナウイルスが少なくとも2種類検知され、その影響(感染)が少なく見積もっても欧州全域、恐らくアメリカ大陸、アジア、アフリカにも広がっていると思われます。実際に12月24日にはシンガポールで感染が確認されたという懸念すべき情報もあります。

次々とワクチンが開発され、一部では接種も開始されていますが、変種が表出してきた状況下でどの程度の抑え込みができるか、まだ暗中模索の状態だといえるでしょう。

そして、コロナウイルスのパンデミックが引き起こした間接的な悪影響の典型例は、世界中での経済状況の悪化でしょう。IMFや世界銀行が最近出した報告書によると、2020年の世界経済は、コロナウイルスのパンデミックがなかった場合のシナリオと比べてGDG換算でマイナス7%以上の影響を受け、その大きさは第二次世界大戦以降、最大の落ち幅だそうです。

コロナウイルスのパンデミックは、世界のあらゆる都市でヒトとモノの移動を止め、多くの産業セクターに多大なダメージを与え、それが雇用に見事に跳ね返ってきているという悪影響もあります。

4月末段階でILOが予測したデータではコロナにより16億人が失業したり、生計を立てる手段を失ったりするという予測が出され、私もこのコーナーで数度ご紹介しましたが、IMFによると、18歳から29歳の17.4%がコロナ失業か先の見えない休業を強いられ、42%が大幅な収入減を経験しているようです。30代前半では10%が失業していますが、コロナパンデミックによる経済の停滞は、確実に次世代の若年層労働者を最も重く襲っていることが見えてきます。

頑張ってポジティブに見ようとすると、先述した加速したAI化社会への移行でAIを使うための新しいスキルをつけ、転職していくチャンスだと捉える向きもありますが、そうしたくとも先立つものがない状況に陥っているというのが現状でしょう。各国政府がそのための財政出動を行う(10兆ドル規模)ことになっていますが、恐らくその正の効果がでるのは、いわゆる先進国と新興国で、最貧国ではさほど効果は発揮できないと見ています。

それゆえでしょうか。国連開発計画(UNDP)が今月出した報告書によると、従来に比べコロナパンデミックによって2億人超の人々がExtreme Poverty Level(1日1ドルの生活)に陥る危険性があると警告しています。

もしこれを意図的に権威主義的な指導者が利用して、自らの権力基盤を強化しようと企てたら、国内での闘争と衝突は増加することに繋がりかねません。

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