開戦か、大恐慌か。世界で新型コロナが爆発させた怒りのマグマ

 

知識や知見が救い可能にしたこと

しかし、このようなネガティブな状況をかえるきっかけを作ったのは、知識とサイエンスという共通のエリアを通じ、国益に囚われることなく、まさに地球益を追求すべく、世界中の人たちが知見をシェアし、「コロナに負けない」という共通目的のために再び国際協調のレールを敷いたことでしょう。

例えば、今、世界中の期待を集めているワクチン開発ですが、今回、類を見ないほどの超高速で開発・実用化までこぎつけることが出来たきっかけは、中国・武漢市で新型コロナウイルスが確認されてから数週間で、中国の科学者たちがウイルスのゲノムを解明し、それを世界に公表したことから始まりました。

知識・知見が国際協調を救い、そしてglobal causeのために役立った典型例だと思います。

その他の分野でも知識や知見の共有が、当初予想されていたよりも早く先進技術を世に送り出すことに役立っています。例えば人工知能(AI)の様々な部門・セクターへの導入は、元々2035年ぐらいに到達するであろうとされていたレベルの実現を可能にしたと言われています。そのAIの活用は、ICT技術を進歩させ、世界中に普及させました。いわゆるニューノーマルの働き方・学び方を実現させています。ZoomやMS Teamsがワークスタイルのメインストリームになり、人々は通勤せずとも、世界中どこからでも自らのいる場所からリアルタイムで会議に参加することも可能になりました。日本で流行りのテーマで言われる“働き方改革”とは全く別物の内容で、1日の労働時間とスタイル、余暇の過ごし方、副業を物理的に可能にする環境など、一気に数年は前に進めたと思われます。夢の世界とされた量子コンピューティングの部門でも大きな進展を遂げ、広く技術革新を加速させています。まさにイノベーションを一気に加速させました。それに私たちが完全に追いつくには多少の時間を要するでしょうが。

また政府の効率化も進みました。今回のコロナ禍で露呈した社会に根強く残る不条理を是正するべく、各国はコロナ対策やリカバリー、Build Back Betterに10兆ドル超を支出し、「政府が国民・市民のためにできること」のイメージを変え、人々が抱く期待の内容とレベルを大きく変化させました。また「何は政府が行い、何は民間主導で行うべき」という効率的な棲み分けも見えてきました。

そして、意外なことに、コロナのパンデミックの裏で、もう一つの地球レベルの人類にとっての危機である気候変動問題がゆっくりとではあるが、確実に進んでいることを意識させました。コロナも気候変動も同じく、いくらポピュリストたちがその存在を否定しても、危機の存在は厳然たるfactであることが露呈し、影響は全世界に広がり、放置すれば取り返しのつかない事態を招くことを、世界中の人たちに実感させ、理解させました。

その結果だというと少し論理の飛躍だと思いますが、アメリカ合衆国では脱炭素とパリ協定への復帰を掲げたジョー・バイデン氏が次期大統領に選ばれました。バイデン氏優勢が伝えられた9月頃から、市場はバイデンシフトにじわじわと移行し、環境銘柄のETFが他を引き離す上昇率を記録してきたことからも見えますが、世界は一気に脱炭素シフトに触れ、脱炭素の大波が起こっています。結果として、日本も2050年までのカーボンニュートラルを宣言し、そのために再生可能エネルギーの利用拡大や水素技術への政府の後押し、自動車のEV化の加速などの施策に舵を切りましたし、中国も韓国も、そしてもちろんEUもコロナからの回復・復活をグリーンな部門への投資と参画を起爆剤としたグリーン・リカバリーとして、世界的な方向付けに一役買っています。

この波はもう戻ることはないと考えますが、コロナを機に、普段では経験できないようなスピードで世界に広がるというポジティブな変化をもたらしたと言えるでしょう。

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