天国か地獄か。希望的観測が招く菅政権「将棋倒し」Xデー

 

五輪開催は到底無理

ということは、いま欧米で投与が始まったワクチンが重大な副作用など引き起こさず順調に普及し、日本にも来春以降に豊富に供給されるようになってたちまち効果を現したとしても、収まったと言えるようになるのはどんなに早くても来年8~9月が精一杯。その数カ月前に国内で完全収束させて「さあ何の心配もありませんので、世界のみなさん、五輪にお出でください」と言える状況を作ることは不可能だということである。

仮に受け入れ国として日本がその状況を作り得たとしても、世界各国はそれぞれの事情を抱えて四苦八苦している真っ最中で、「我が国は残念ながら参加できません」といった表明が相次ぐであろうことは目に見えている。

つまり、五輪をまともな形で開くのが不可能であることは、すでに確定している。それをそうは言わずに「できる」という希望的観測を繋ぎ続けようとするのは、政府や東京都や組織委員会の立場としては、ある意味で仕方がないとして、マスコミまでが、これをまさに忖度というのだろう、その真実をズバリ語ろうとしないのは、彼らもまた五輪で稼ごうという思惑があるからで、まさに世も末の権力とメディアとの癒着状況である。

菅政権の先行きは不透明

菅義偉政権にとって、最初の分れ道は1月11日に訪れる。この日がGoToトラベルの一時全面停止の期限で、さてその先どういう施策を打ち出すのか。専門家や自治体からは、その時点までに何が達成されたらそれを解除し、そうでなければ延長するのか、事前に早めに基準をはっきりさせてもらいたいという要望が寄せられているが、菅はそれに応える用意がないので、ここで最初の混乱が起きるだろう。

本当を言えば、「経済活性化とコロナ対策の両立」と言いながら実際には経済優先でGoToキャンペーンに前のめりになってきた「いのちよりカネ」路線を切り替えて、「カネよりいのち」路線にきっぱりと転換することが肝心だが、菅にはそれはできない。それどころかむしろ、すべてが中途半端でメリハリが効かないのが菅流であることがますます露わになる中で、1月11日より先の展望をシャキッと打ち出して国民にキリッと覚悟を呼びかけるようなことは到底難しく、そこから政権の崩れが始まる可能性のほうが大きい。

本誌が最初から指摘しているように、この政権は「まあ何とかなるだろう」という希望的観測の連鎖で成り立っている。経済とコロナ対策の二兎を追うことを続けていても感染はそれほど酷いことにはならないだろう、そのうちにワクチンが間に合って夏までには収束に向かうだろう、そうすれば五輪はどんな形であれ何とか開催に漕ぎ着けられるだろう、苦難を乗り越えて五輪をやり遂げた首相ということであれば9月総裁選は無投票再選ということになるだろう、それを背景に10月総選挙に挑めば勝利は間違いないだろう……ということで、これが1月11日でコケれば、後は将棋倒しのようにバタバタと崩れていく。

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