零下8度でコート着用は4人だけ。金正恩「人民第一主義」の虚しさ

Pyongyang, North Korea 12 29 2020
 

北朝鮮は国連安保理による経済制裁によって経済が行き詰まり、コロナ防疫体制の強化策として国境を閉鎖したことにより、北朝鮮貿易の9割以上が中国とのものであるにも関わらず、その貿易額もほぼゼロに近い水準まで減っている。

この結果、北朝鮮の市場からは、中国製品は、ほぼ姿を消したようで、中国の朝鮮族の密輸業者は、北朝鮮側から「砂糖や調味料などの調達依頼が多い」とのことだった。知り合いの朝鮮族の密輸業者は「夏でも冬でも、中朝関係がどうなろうと、俺たちは密輸を続けるし、これしか生きていく方法がないんだ」と言っていたが、今度ばかりは、警備体制が厳しいようなので、酷寒の中で凍てつく鴨緑江の対岸にいる密輸仲間と連絡を取り合っているのだろうか。

私はもう10年以上も前になるが、凍てつく豆満江を中国側から北朝鮮側に渡ったことがある。凍った川の氷の厚さは10センチくらいだったか、ものすごい勢いで水が流れていくのを見ながら渡ったが、案内人は、これしきの事で怯えていたら飯は食えないよ、と言っていたことを思い出した。

金正恩総書記は、党大会で2016年から20年にかけて実施した「国家経済発展5か年戦略」の失敗を認め、国民に「自給自足」促しながらも、一方で「核兵器を小型化して能力もさらに高め、首都ワシントンを射程に捉えた核による先制・報復攻撃能力の獲得を目標にする」と嘯(うそぶ)き、米国を「最大の主敵」と称し、米国の対北敵視政策を理由に改めて核保有を正当化した。

このような金正恩氏を総書記に推戴する決定書には、「主体革命の卓越した指導者」などと過剰な表現で褒めちぎったようだが、こんな誉め言葉でも付けない限り、金正恩総書記への国民の不満を解消することはできないほどに、金正恩体制の基盤は脆弱化している。

狡猾な中国の習近平主席は、金正恩氏の総書記選出の祝電で「全朝鮮労働党員と朝鮮人民の信任、支持期待を体現した」と称賛したが、北朝鮮の誰もがこのようには思っていない。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by: john smith williams / Shutterstock.com

宮塚利雄この著者の記事一覧

元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」 』

【著者】 宮塚利雄 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 5日・20日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 零下8度でコート着用は4人だけ。金正恩「人民第一主義」の虚しさ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け