結局やるのか、やめるのか。誰も言い出せぬ東京五輪の最悪シナリオ

 

バッハ会長にしても、仮に3月末に開催のゴーかストップかを決めなくてはならないことは知っていても、現時点では各国、各競技の現状を十分に把握していないのかもしれません。

また、森+橋本グループにしても、あるいは菅内閣にしても、感染症対策などを総合して日本サイドとして、開催可能なのか無理なのか、判断材料を十分に持っていないし、判断する基準もないのかもしれません。ゲームのルールとして「世論を炎上させない」ことが最優先だということは知っていても、どうすればいいのかは分からない、そんな状況だという可能性があります。

まして、仮にコロナ禍の中で開催した場合、例えば重たい感染対策を講じて観客を入れてやるとか、無観客でやるとか、辞退国や選手の辞退が出てもやる場合に、収支はどうなるのか、マイナスが出たら日本とIOCの分担はどうなるのか、これも「全体像を理解している立場の人はもしかしたらいない」のかもしれません。

更に、招致活動における疑惑も、もしかしたら真相の全体像を知る人物はいないのかもしれないのです。少なくとも、人には言えない活動の中で、仮にカネが動いたとして、ソチやリオと比べてどのぐらい悪質だったのか、などといった比較は恐らく不可能だし、仮にカネが動いていたにしても、また例えば一度は捜査に動いたフランス当局の動きにしても、日本サイドとして全体像は誰も理解していないのかもしれません。

つまり、巨悪が「闇」を抱えているのではなく、誰も全体像が見えていないし、結果的に誰も意思決定ができない、誰も世論に対してクリアな説明ができない、参加している多くのプレーヤーが自分の見える範囲で動いているだけ、まして全体に対する責任の意識はない、そんな可能性です。

その一方で、島根県の丸山達也知事という人は、総務官僚出身の人物であり、決して野党的なスタンドプレーをするタイプではないと思いますが、今回「聖火リレー中止」と「開催批判」を行っています。しかも相当に厳しい姿勢であり、広島の中国新聞(電子版)によれば、

県と大会組織委員会が締結する協定の解除規定に基づき聖火リレーを中止できるとした丸山知事の発言に「協定は秘密保持が原則のはず」と違和感を示した組織委に対し、「公費をかける事業で一切公開できない協定はあり得ない」と反論。「契約違反と言いたいのだろうが脅しだと思っている。こういう協定を結ばせるなら、ろくでもない組織だ。公益財団の認定を取り消してもらいたいくらい」と激しく批判した。

と堂々たる正論を展開しています。「協定は秘密保持が原則」などというのも奇々怪々ですが、問題はこの丸山知事の言動に対して、オリパラ推進派の反論が「100%の反対と怒り」といった熱量を伴っていないことです。

誰も全体像を把握していない中で、中止なら中止で、その「空気」ができれば、それに乗って行きたいけれども、自分たちの側からはそれはできない、といった感触も感じられます。

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