コロナの影響だけにあらず。地方から上京する女性が増え続ける訳

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コロナ禍の現在にあって、東京への転入の主体が女性であるという事実をご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、とある分析結果を紹介しつつ、なぜ女性の方が上京者数に占める割合が高いのかを検証。さらに人口流出に歯止めのかからない地方自治体に対しては、古い考え方からの脱却を促しています。

東京は女性の居場所になる?

こんにちは!廣田信子です。

2020年の人口移動報告(総務省1月29日発表)で、東京への人口集中が減速したことが話題になっています。果たして実情はどうなのか…今後もこの傾向が続くのか…気になるところですが、人口動態分析で定評があるニッセイ基礎研究所 人口動態シニアリサーチャー天野馨南子さんが、おもしろい分析をされています(週刊住宅2月8日号による)。

まず、数字を確認すると、それでも、2020年1年間で見ると東京都は転入者が転出者を上回る「転入超過」となっています。しかしながら、転出者数は前年から1万7,938人多い40万1,805人で、全国で唯一増加しています。

転出先は近隣3県が55%を占めていて、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが普及し、都心から通勤圏内の郊外へ移り住む流れが進んでいることを表していると考えられます。

他道府県から東京都への転入者数は43万2,930人。転出者を引いた転入超過数は、昨年より5万1,857人少ない3万1,125人でした。1年で見ると、転入超過ですが、7月から12月まで6カ月を見ると、連続で人口が減る「転出超過」が続いていて、集計を始めた2013年以降、初めての転出超過で、これで、東京圏への人口集中に急ブレーキがかかった…と言われている訳です。

これに対して、天野氏は、データの総数だけ追えば、「東京から人が出て行っている」と連想しがちだが、男女比を見ると、大きな違いがあることがわかる。一言でいえば、転入の主体は女性であり、転入超過月では、女性が男性より多く増え、逆に転出超過月では、男性の方が多く減っている。

例を挙げると、4月(転入超過月)は、女性の転入超過数は男性の約3.5倍。5月(24年ぶりの転出超過月)では、女性の転入超過数は男性の1/4にとどまっている。その理由として、女性の場合、出産や子育てのため転居ができないからだと思いがちだが、実際はそうではない。

東京都への転入超過では、7割が20代前半の人口で、圧倒的に大卒新卒、大卒高卒後の転職といった就職関係の転居によって、東京への一極集中が起ってきた。新卒者による東京転居であれば、ほぼ同数の男女の若者が東京に来ることになるが、コロナ禍にあってはそうはならない。コロナ不況により、地方における女性の就職は厳しさを増していて、女性は都外に出たくても、出るに出られない状況がうまれている。逆に、地方の女性は、働き口を見つけるため東京に出てこざるを得なくなっている…と。

ある自治体の首長が、地方にも介護と言う働き口がある…と言ったのには驚いた。女性の仕事=介護という古い固定観念だ。女性は、仕事をライフデザインと考えている。やりたい仕事がある限り、東京に出ざるを得ないし、東京から出ることができない。そのため、東京の人口を地方が奪い返せているわけではない。東京からの人口流入の恩恵を受けているのは、神奈川県と千葉県の2県のみと言ってよく、コロナ禍の現在、働き口は売り手市場が続いている。

男性は女性に比べ都外でも仕事が見つけやすく、営業職などリモートでも対応できるが、女性の場合、そのような営業職があるかと言うと男性より厳しい現実がある…と。

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