NTTが総務省を高額接待してまで望んだ「NTT法」改正という真の目的

 

ドコモの減益を覚悟してでも、NTTが政府とのつながりを強めたいという背景に、グローバルICT企業をめざす澤田社長の飽くなき野望と危機意識がのぞく。

NTTは1985年4月、日本電信電話公社の民営化によって誕生、その後、民業圧迫を避けるため、NTT東日本とNTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ、NTTデータに分割された。しかし今や、事情がすっかり変わっている。世界競争のなかで後れをとりつつあるのだ。

週刊ダイヤモンド20年12月12日号の特集「NTT帝国の逆襲」の冒頭に、次のような記述がある。

かつて通商問題の標的となるほどに世界を震撼させたNTTグループのプレゼンスは、今や見る影もない。…基地局ビジネスの主導権は中国ファーウェイなどのデバイスメーカーに奪われ、ITサービスの主役は米IBMや、米アクセンチュアといったコンサル企業だ。そして、いよいよ“ラスボス”の米GAFAがクラウドビジネスの拡大とともに、通信の領域へ殴り込みをかけてきている。

こうした状況を打開するため、NTTはトヨタ自動車と組み、2,000億円ずつ出し合って、スマートシティ事業を立ち上げるなど、新分野への進出に意欲的だ。銀行と提携し、顧客データを活用して金融事業をはじめるのがいいとか、Eコマースも面白いとか、NTT法の縛りが緩めば、さまざまな事業展開の可能性が取りざたされるだろう。

ただ、肝心の谷脇氏は辞職に追い込まれ、その他多くの総務省人脈も処分で総崩れとなって、とても澤田社長の思い通りには進みそうもない。

「彼は改革マインドがある」と澤田社長を買っている菅首相も、しばらくはNTTと距離を置かざるをえないだろう。よりにもよってホームグラウンドともいえる総務省で、自分の息子がからむ疑惑が発覚し、続けざまに看板政策「携帯値下げ」との関連が疑われる過剰接待が明るみに出たのである。

官僚たちの堕落と、好き勝手に人事権をふるってきた自らの姿勢との間になんらかの関係があるのかどうか、菅首相はよくよく考えてみる必要があるのではないか。

image by: h4fiz / Shutterstock.com

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