NTTが総務省を高額接待してまで望んだ「NTT法」改正という真の目的

 

キーパーソンはNTT社長、澤田純氏だ。「独裁者」とメディアで称されるほどの凄腕社長だが、その野心は、世界を見渡し事業の多角化を進める路線に向かっている。そこで邪魔になるのが、巨大企業の独占を防ぐためのNTT法という縛りだ。この法律があるため、NTTが新規事業を始めるには総務省の認可が必要になる。

文春オンラインの記事に次のようなくだりがある。

社長就任後、澤田氏が官僚や政治家を接待した回数は、他の社長経験者ら幹部を遥かに凌駕する。19~20年の2年間で実に20回超。大半が上限「5万」の設定だ。抜かりなく接待を終えてゲストを丁重に見送ると、澤田氏は3階のバー「チェンバーローズ」の椅子に腰を沈める。ウイスキー竹鶴の水割りを舐めながら、感想戦さながら、側近たちと議論を交わすのだ。

麻布十番のビルにあるNTT子会社運営の会員制レストラン「KNOX」。澤田氏はここで、NTT法の改正、あわよくば撤廃に向けた人脈づくりに励んでいたのだろう。とりわけ重視した接待相手は谷脇康彦・前総務審議官にちがいない。

谷脇氏は菅首相の看板政策「携帯値下げ」の推進者であり、NTTにとって厄介な存在だが、その分、うまく付き合えば、バーターを持ちかけやすい相手でもあった。

2018年9月20日、谷脇氏のブログ「タニワキ日記」に、こう記されている。

夜、久しぶりに麻布界隈にて知人と会食。アクリルの仕切りで声が少し聞き取りにくい

麻布界隈とは「KNOX」、知人とは澤田社長だ。当時、総合通信基盤局長だった谷脇氏との間で、何が話し合われたのか。その1か月前に、こんなニュースが報じられた。

菅義偉官房長官は21日、札幌市内で講演し、日本の携帯電話の利用料について「今よりも4割程度下げる余地がある」と述べた。大手携帯電話会社が多額の利益を上げていることに触れ「競争が働いていないといわざるを得ない」と問題視した。(日経電子版18年8月21日)

少なくとも、携帯値下げが話題にのぼったことは間違いないだろう。しかし、澤田社長がただ単に「お手やわらかに」と、頼み込んですませるはずはない。目の前にいるのは菅氏の実働部隊長ともいえる人物なのだ。

おそらく、谷脇氏を味方につけるため、携帯値下げへの協力を約束するとともに、NTT法などによる規制を緩和してくれるよう要請したにちがいない。もちろん、そのなかにはドコモの完全子会社化計画も入っていただろう。澤田社長は、いったん分割されたNTTグループを再び統一し「大NTT」によって世界に飛躍したいという構想を抱いているらしいのだ。

3月15日の参議院予算委員会に参考人として出席した澤田社長は谷脇氏との話の内容について問われ、こう答えた。

「私のほうから料金の話を出すことはない。もし谷脇さんがそういう話が出たかもしれないとおっしゃったとすれば、出たかもしれませんが、それは私は多分、そこで止め、次の話題に変えたと思います」

3月8日の参院予算委員会で、谷脇氏は澤田社長との会食について「携帯電話料金の話は話題に出たと思います」と語っており、澤田社長はそれを打ち消したつもりなのだろう。

その会食から2か月後の18年11月20日、澤田社長は毎日新聞のインタビューに対し、携帯電話の値下げに備えて11月末から、NTTとドコモが協議の場を設けるという趣旨の発言をしている。

print
いま読まれてます

  • NTTが総務省を高額接待してまで望んだ「NTT法」改正という真の目的
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け