報道以上にひどい。日本の原発の甘っちょろすぎるテロ対策の実態

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東京電力の柏崎刈羽原子力発電所がテロ対策の不備を指摘されました。その内容は、杜撰極まりなく、原発テロに対しての危機感が皆無で、何かあったら東電お得意の「想定外」を発動させればよいとでも思っているかのようです。しかし、規制委の指摘以上に実態はひどいものと声をあげるのは、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんです。物理面、ソーシャルエンジニアリングの観点、サイバー面すべてで簡単に侵入を許してしまう国内の某原発の実例を紹介。その原因を明かすとともに、規制委もマスコミもその深刻さを知り、踏み込むべきと訴えています。

規制委も知らない原発テロ対策の現実

原子力規制委員会はこのほど、東京電力柏崎刈羽原子力発電所に対してレッドカードを突きつけました。

「原子力規制委員会は24日の定例会で、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策設備の不備が長期間続いていた問題に法令違反があったとして、東電に原子炉等規制法に基づき、同原発内の核燃料の移動を禁じる是正措置命令を出す方針を決めた。事実上、同原発を運転禁止状態にする。今後、東電に弁明の機会を与えた後に正式決定する。(中略)

 

テロ対策設備の不備は、規制委の2月下旬の検査で判明。20年3月~21年2月、侵入検知装置が16カ所で故障し、うち10カ所は代わりの対応も不十分で、侵入を検知できない状態が30日間を超えて続いていた。規制委は、セキュリティー上『最も深刻な事態』とし、追加検査などが終わるまでは、東電が優先して再稼働を目指す7号機について、原子炉起動に関する審査をストップする方針を示している」(3月24日付東京新聞)

柏崎刈羽原発をめぐっては去年9月に社員が同僚のIDカードを使って中央制御室に不正に侵入したことがわかり、この2月、東京電力は小早川社長など幹部の処分を発表したばかりでした。ニュースに接して、そんなにひどいのかとお怒りの向きもいらっしゃるでしょう。

その通りと言いましょうか、実は、もっとひどいのです。そして、それを見破れない原子力規制委員会も誉められた話ではないのです。私が実際に指摘した事例を明らかにすると、怒りを通り越して卒倒されるかもしれません(笑)。

会社の名は伏せて「日本電力(日電)」という形でその一部をお話ししますと、テロリストや外国の特殊部隊の目でセキュリティを考えたことがないというのが一番の問題でした。

日電の日本海に面した原子力発電所は、水平方向からの侵入や攻撃に対してはそれなりの備えになっていました。しかし、垂直方向、つまり特殊部隊の基本的な技量であるHALO(高高度降下低高度開傘)で、それも夜間、雲の上を飛ぶ航空機からスカイダイビングで侵入された場合、中央制御室のすぐそばまで接近できる状態でした。

また、中央制御室より離れた場所でも、電力を外部に送出している部分を少量のプラスチック爆薬で破壊し、電力を完全に止めることは数分間の作業で可能な状態でした。

さらに、津波対策として全電源喪失を避けるために非常用電源装置を建物の外の高い位置に設置したものの、HALOで敷地内に忍者のように降り立ったテロリストや特殊部隊が、これまた数分間の作業で破壊できる状態でした。このように、フィジカル(物理)面のセキュリティがまずデタラメなのです。

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