根拠なき楽観が国民を殺す。菅政権はコロナ対策で何をしてきたのか

kawai20210331
 

新型コロナ対策の緊急事態宣言が3月21日に解除されるや間髪入れず感染者が急増、もはや第4波は避けられない状況となった日本列島。初の緊急事態宣言が出されてから1年が経とうとしていますが、国による有効な対策は未だ取られていないと言っても過言ではありません。その原因はどこにあるのでしょうか。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、「どんな努力したところで、やり方がまちがっていれば無策と一緒」と菅政権を厳しく批判。さらに「科学的視線を生かした努力」への舵切りを強く訴えています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

「根拠なき楽観」という無策

第3波が下火になりかかったら、即第4波。ガーッと増えては若干減り、あっという間にガガガーっと増える。1年前の2020年4月7日に、初めての「緊急事態宣言」が発令されてから、何度も同じ状況が繰り返されています。

29日に西村経済再生担当大臣が、経済3団体の代表と行ったテレビ会議で、日本商工会議所の三村会頭が求めたのは、まさに私が感じているリアルそのものでした。

「過去の対策を検証し、継続するもの、緩めてもいいもの、厳しくするものを明示し、改めて協力を求めるべきだ」(by 三村会頭)

私自身、コロナ感染拡大が深刻化した当初から、「対策の検証作業の重要性」と「情報の透明性」さらには「迅速な発信」を訴えてきました。

しかしながら、政府は国民にお願いすることを繰り返し、何をもってその決断がなされたのか?「やる!」と言っていたことはどうなっているのか?に関する納得できる情報は伝えられていません。

メルマガVol.204で取り上げた「GoTo事業の検証結果」(「『GoToは感染拡大』をめぐる調査研究の誤解――Vol.204」)についても、政府は分析結果を対策に生かすことはありませんでした。

【関連】「GoToで感染拡大」の論文を軽視、学問に敬意を払わぬ政治家たち

「1年やってきたから、感染対策はわかっている」だの「マスク会食を」だの「不要不急の外出を控える」だの、感染者が急増する度に繰り返すだけ。おかげで「外を歩くだけでは感染するものではない」と指摘する専門家もいるのに、マスクをちょっとでもはずすと非国民呼ばわりです。

「会食で感染拡大している」として時短営業を求めますが、「感染させない会食」として、パーティションの設置はやCO2濃度のチェック、お客さんの滞在時間の制限や、客同士の距離を取るなどの対策で、「どれだけ効果あったのか?」を検証すれば、むやみに時短営業させる必要はなくなるはずです。

「PCR検査を徹底する」と政府から聞こえてきますが、「いつ、どこで、だれ」が受けられ、「どれくらいの頻度で受ければ感染防止になるのか?」は伝えられていません。

政府が「動いてる」ことは確かでしょう。

しかし、どんな努力したところで、やり方がまちがっていれば無策と一緒です。経済を優先したければ、なおそら科学的視点を大切にしなきゃいけないのに、「都合の悪い情報はシャットダウンしている」としか思えません。

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