心理分析家が検証「人はウソをつくと目をそらす」はどこまで本当か?

 

ベースラインからの乖離を観察し、精査する

本ケースでは、「23時に退店したこと」が真実です。店の退店時間は、この政治家にとって動揺を引き起こす重要な話題だと考えられます。緊急事態宣言下において20時以降の不要・不急の外出は避けるべき、というルールがあるため、退店時間が20時を超えているという発言は、ウソをつく誘因があり、正直に話しても動揺を引き起こす話題だと考えられるからです。ウソを推測する上で、個人内比較法を使う場合、こうしたクリティカルな話題の真実性を質問法を駆使したり、他の情報源を活用し、担保しておく必要があります。

退店時間について話しているときの言動反応を観察します。言語反応は言い淀みです。非言語反応は、「一瞬だけ左上に目をそらし、眉を中央に引き寄せ下げる」「一瞬だけ左上に目をそらす」です。特に2回出現した「一瞬だけ左上に目をそらす」をベースラインとします。

そして、問題にしたい話題、「飲食店に何名で訪れたのか」について話しているときの反応を観ます。それは「一瞬だけ目を左右にそらす」です。ベースラインの反応とは異なります。どの程度ベースラインから乖離しているかは、様々な計測方法があります。ここでは、取り敢えず、ベースラインとは違う、と考えて頂ければと思います。

実務の世界―警察の犯罪捜査、第三者委員会による聞き取り調査、その他ヒューミント、オシントなど―では、このベースラインからの乖離をホットスポット、すなわち、精査ポイントと考え、その話題についてさらなる質問をしたり、物的証拠や目撃証言などを探す・照合する行動に移ります。怪しいと思う話題について漠然と質問をしたり、物的証拠を探すのではなく、怪しい話題の中でも特に精査すべき話題を絞り、効率化を図るのです。

日常・ビジネスシーンなら、「この人は信用できない」という疑念が高まり、その人物が言ったことに警戒するようになるでしょう。

ウソと心理を見抜くという知的営為

いかがでしたでしょうか。ウソを見抜くという行為は、いわゆるウソのサインを探し出せば見抜くことが出来る、と言った単純なものではないということをご理解頂けたと思います。そもそも巷に溢れるウソを見抜く系の書物やセミナーで語られているウソのサインは、根拠が薄いものや限定的な場面でしか使えないもの、机上の空論で実用性に乏しいもの等が多いように私には思えます。

『清水建二のウソと心理の見抜き方』では、科学的根拠に基づき、かつ、著者及び著者の生徒さんらが様々な実践の場で用い、実用性があると考えているウソと心理の推測法を紹介します。机上の空論でもなく、使用範囲や精度があやふやな経験則でもありません。

具体的には、科学的根拠を明確にするために様々な学術論文の内容を説明します。特に論文の方法論を理解することで、実験結果をどこまで一般化し、自身の関心のある真偽推測や心理推測状況にどこまで適応できるか判断するヒントを得ることが出来るでしょう。また、著者が代表を務める(株)空気を読むを科学する研究所が実施している数々の実験動画や公開されているニュース動画等を用いて、推測するための実践力を養成します。

ウソや心理を推測するのに有効な非言語サイン、言語サイン、質問法、状況のつくり方を総動員して、人間存在の蘊奥を探求しましょう。

print
いま読まれてます

  • 心理分析家が検証「人はウソをつくと目をそらす」はどこまで本当か?
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け