去る4月14日、総務省は楽天モバイルに対して5G向け周波数帯「1.7GHz帯の20MHz幅」を新たに割り当てると発表しましたが、どうやらこの一件には「裏」があるようです。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』の中で、楽天以外の大手3キャリアが同帯を希望していたかどうか怪しいとしながら、楽天側が「貧乏クジ」を引かされたとの見方を示しています。一体、どういうことなのでしょうか?
楽天モバイルに東名阪以外で使える5G向け周波数帯を割り当て
総務省は2021年4月14日、楽天モバイルに5G向け周波数帯を新たに割り当てると発表した。割り当てられたのは1.7GHz帯の20MHz幅。ただし、東名阪以外での割り当てとなる。東名阪はすでにNTTドコモが所有している。
そもそも、この周波数帯は2018年も割り当て対象となっていたが、どのキャリアも希望しなかった「余り物」だ。東名阪を持つNTTドコモですら無視した、いわく付きの周波数帯だ。
今回、4キャリアが獲得に名乗りを上げたが、総務省が設定した審査項目は「スマートフォン等へのeSIM導入にかかる取り組みが進んでいること」「SIMロック解除にかかる取り組みが進んでいること」など楽天モバイルに有利な審査ばかりであった。
総務省からは楽天モバイルに割り当てたいという下心が透けており、「仕事している感」を出したいがために割り当てたのではないか、と穿った目で見てしまった。
一方、3キャリアとしては本当に割り当てを希望していたのか、かなり怪しい。そもそも2018年に希望を見送った周波数帯である。
5G時代に向けて周波数帯が欲しいとはいえ、東名阪以外となると、使い勝手は相当、悪いのではないか。
今後の割り当てのことを考え、手は上げるものの、正直言って「他に割り当てられろ」と内心、思っていたのではないか。
今回、希望を出し、審査に通らなければ、後々、本当に欲しい周波数帯が出てきたときに有利に働く可能性が高い。
一方、楽天モバイルも割り当てられて本当に幸せだったのか。3月以降、Twitterで「楽天モバイル 圏外」と検索すると、ユーザーの悲痛な声が毎時間、上がっている。
いま、楽天モバイルがやるべきは人口が集中する東名阪のネットワーク品質の改善だろう。
人口が決して多くはないエリアで新しい周波数帯を割り当てられたからといって、設備投資を回す余裕はないはずだ。活用するには終了促進措置のコストも重荷となってくる。
楽天モバイルがいま欲しいのはプラチナバンドのはずだ。現在、総務省で議論が進んでいるが、3キャリアからの合意を得られないことには実現は難しそうだ。
しかし、いまの政権を考えれば、万が一のこともあり得るだろう。
そんなとき、このタイミングで東名阪以外の1.7GHzを割り当てられたことを後悔するようなことになっては元も子もない。
果たして、楽天モバイルは本当に、東名阪以外の1.7GHzが欲しかったのか。この周波数帯を活用する余力はあるのか。ほかの3キャリアの関係者は楽天モバイルを見てほくそ笑んでいるのではないだろうか。
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