日本は「一線」を越えたか?首脳会談で日米が中国に送った最後通告

 

気になるアメリカの本気度

しかし、ここで見極めないといけないのは、「日本は、対中戦略の安全保障面において、一線を越えたのか否か?」というポイントでしょう。

特に台湾問題については、これまでお茶を濁すような対応しかしてこなかったのが、今回の首脳会談の合意内容によって、解釈によっては「中国にケンカを売る」ような決定をするに至りました。

中国政府は、日米首脳会談や先日の2プラス2の内容を激しく批判しつつ、日本の“本心”を見極めるべく、今週は細かいジャブをたくさん撃ってきています。

例えば、中国政府によるJAXAへのハッキング事件の“露呈”や、菅政権が閣議決定した福島第一原子力発電所の汚染水(処理水)の海洋放出に対しての激しい抗議はそうでしょう。

前者については、聞くところによると、わざとばれる様にしたようですし、後者については、以前、(韓国同様)科学的には問題ではないとの結論を出していたのにもかかわらず、日本に“メッセージ(警告)”を送るかのように、執拗に激しく批判しています。

さらには、一時期おとなしくなっていた尖閣諸島への中国漁船の襲来も頻発し、日米の出方とdetermination(覚悟)の程度を測りに来ています。

これについては、これまでのところ、なんといって目立った変化はなく、日本政府側はあくまでも外交ルートを通じた“強い”非難を行っているだけです。

そして、一番目立つのが、今回、日本もアメリカに与することにした“台湾”へのプレッシャーをかけて、日本の出方を探っています。

これに対しては、日本は集団的自衛権の行使の対象範囲に台湾および台湾海峡を加えることで、中国へのメッセージを送っています。

しかし、ここで気になるのが、アメリカの本気度です。

尖閣問題が激しさを増し、中国による武力行使に至りそう状況になった場合、どの程度、米軍は貢献してくれるのでしょうか?

今回、日本の防衛力強化をわざわざ謳ったのは、もしかしたら、「協力はするし助けるけど、実際には自ら対峙してね」といったメッセージであったのではないかと勘繰りたくなります。

他には、日本もしっかりと巻き込んで、米中対立のシンボルとして、台湾への支持と防衛を前面に押し出していますが、先日、インド太平洋軍司令官が議会で証言したように“6年以内に中国が台湾に攻め入る”可能性があり、実際に武力による統一を図ろうとした際、アメリカは本当に中国と一戦交えるでしょうか?

どちらにも答えることが出来ませんが、トランプ政権時代とは異なり、バイデン政権の対中強硬度に曖昧さを感じてしまいます。

もしアジア太平洋地域有事の際、アメリカが出てこなかったら…。

ちょっと恐怖を感じます。

しかし、興味深いのが、トランプ政権の方針を引き継いで、アフガニスタンから米軍を撤退させ、対中戦力の拡充を図ろうという決定です。

「テロ対策から中国対策へのシフト」と見ることも可能です。こちらについては、もう少し様子を見ないとわかりません。

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