日本は「一線」を越えたか?首脳会談で日米が中国に送った最後通告

 

日米首脳会談の最中に見せた米の不可解な動き

次にメジャーな点は「気候変動対策・脱炭素におけるさらなる深掘り」です。

パリ協定から離脱したトランプ政権の方針を180度転換して、再度参加し、今では、ケリー特使を軸に“失われたイニシアティブ”を取り戻すかのように、非常に景気のいい目標(ターゲット)を旗印に、議論をリードしようとしています。

首脳会談の結果を受けて、ケリー氏は早速、IMOの場で議論されていましたが、これまでアメリカがブロックしてきた国際海洋運輸からの排出削減について、現行の【2050年までに半減】という目標から、一気に【2050年までに排出ゼロ】というターゲットを掲げて議論をリードしようとしています。実際に日本も深掘りに追従する発言をしたそうです。

またちょうど、このメルマガがお手元に届く際に開催されている米主導の気候変動サミットの機会を用いて、パリ協定実施の議論をリードすべく、2030年までの削減目標を2005年比で52%削減という大きな深掘りに乗り出しましたが、日本も日米首脳会談の結果を受けて、これまでの2013年比2030年までに26%減としていた目標を、一気に46%“以上”の削減を目指すとの深掘りを宣言しました。

日米が掲げるターゲットは、確かにパリ協定で示された「世紀末までに全球平均温度上昇を、産業革命時に比して2度未満、できれば1.5度を目指す」としたラインに計算上、貢献するものではありますが、実現の可否については、不透明なままの見切り発車と言えます。

よく言えば政治的なイニシアティブ、悪く言えば、実現可能性が不透明なままのパフォーマンスと表現できますが、先の台湾シフト同様、どこまで日本の経済界と具体的にすり合わせたのかは不明です。

ただ、日米首脳会談を受けて、日本における脱炭素の動きは一気に加速したように思います。

例えば、脱炭素を実現する自治体数を2030年までに100に“前倒し”し、そのためにRoof-Topの太陽光パネルの設置を無料で行うための支援を提供するという策を発表しました。

またこれは、これまで改革が叫ばれつつ、実際には硬直化してしまっていた【エネルギー・電力の自由化と気候変動対策のためのファイナンスの議論】との絡みを一層確実化していく方向性が示されました。

日本としてはポジティブに動いているように思いますが、ここでもまた要検討なのが【アメリカの本気度】です。

ワシントンDCで日本と首脳会談を行っている間、気候変動問題の責任者であるケリー氏は、中国との協議のために上海に赴いていました。

表向きは【米中対立が極まる中、唯一米中で協力できるのが気候変動問題ではないか】ということですが、実際には、いろいろと漏れてくる情報によると、「気候変動問題の進展によって出来上がり拡大するグリーンマーケットのシェアの山分け割合を協議したのではないか」とのうわさもあります。

本件については、おそらく日本側には伝えられていませんが、そのような中、今後、どのように気候変動問題でふるまうべきか、しっかりと考えておかなくてはなりません。

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