菅内閣は今すぐ解散すべし。最善策は五輪とコロナが争点の総選挙だ

 

3番目は、五輪です。7月という中途半端な時期。つまり日本における感染拡大がどうなっているか分からず、また世界における動向も分からない時期に、海外無観客、国内観客削減という措置で五輪を実施するというのは無謀です。もしかしたら国レベルでの参加断念、あるいは予選実施のできない場合に競技レベルで開催断念、これに加えて、個人レベルでの感染懸念による参加取り下げなどが横行するかもしれず、そうなっては、五輪としての体裁が取れません。

それ以上に、半端な形で五輪開催を強行すると、経済効果はゼロであるばかりか、日本社会における「海外からの感染持ち込みへの拒否感」が陰湿な形で広がってしまうのが気になります。それは五輪の成功不成功というだけでなく、「ポスト・コロナ」において、インバウンド観光客が戻ってくるのか、果たして日本サイドは「おもてなし」の姿勢に戻れるのかといった問題も不透明にしてしまいます。

ですから、ここは五輪を10月末から11月に延期することを提案したいと思います。最大の問題は、数千億円相当のカネを払って独占放映権を買っている米NBCですが、彼らにしても、中途半端な形での7月開催では投資金額は十分に回収できないと思われます。

米国の場合に秋は、フットボールの公式戦、野球のポストシーズン戦に加えて、バスケのNBA、ホッケーのNHLなどがフルで動くため、五輪中継の割って入る余裕はないし、CM販売上も無理だということが言われてきました。

ですが、コロナから「脱しつつある」であろう2021年秋の場合は、例外だと思います。7月開催で大損するよりも、他のプロスポーツと日程を協議し広告出稿を調整した上で、10月末に実施というのは、米NBCとしてもベターな選択肢になる可能性は十分にあります。あくまでIOCが決定することだというのは、そうかもしれませんが、日本には国家主権があるわけですから、10月末開催を強く主張する、そのための権限を主権者が政府に委任するのです。

つまり、4月5月はとにかく病床確保で救命に徹する、そしてワクチンについては、6月15日までに高齢者、8月10日までに一般接種を終えて、日本サイドにも、そして海外からの選手役員にも安心感を確保する中で、10月末に五輪を行うのです。これが成功すれば、社会のムードは一気に明るくなるでしょうし、経済も正常化へ向かうと思われます。

別に奇策でも何でもありません。ただ、病床の問題、ワクチンの問題については、平時の法律があるので、厚労省や医師会は動きが取れないし、内閣には独断で非常手段に進む権限はありません。戦争がどうとか、敵が攻めてきたらどうというような、別種の事態を想定して内閣に権限を付与するのではなく、今ここにある「コロナという危機」に絞って、主権者に判断をしてもらうのです。

その上で、病床確保、ワクチン接種のスピードアップ、ワクチン効果を確認できた後のタイミングで海外観客を入れた五輪開催という「3段構え」の政策を行うかどうか、その権限を立法府を通じて内閣に付与するかどうか、これを主権者に聞けばいいのです。

菅総理にはそこまで政治的リスクを引き受ける能力がないのであれば、総辞職して総理総裁を別の人材に変え、その上でこの「3つの政策」を掲げて解散すればいいと思います。また、各省庁や都道府県の関係もあって、自民党政権ではこの3つは実施できないというのであれば、野党連合に加えて自民党の脱藩組で、この政策を掲げて政権奪取に動けばいいのです。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

image by: 首相官邸

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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