フジTVの外資規制違反より深刻。楽天の中国提携が日本に与える大損害

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菅首相の長男が総務省接待問題に関わった疑惑を大々的に報じられた「東北新社」の子会社が、議決権を持つ外資比率が2割以上を超えると放送できないとする「外資規制」に違反していたことが判明し、衛星放送の認定が取り消された問題が先月に話題となりました。その後、フジテレビも過去に「外資規制違反」状態だったことがわかり、その報道に批判の声が多くあがりましたが、米国在住作家の冷泉彰彦さんはメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、フジのケースは手続きの問題だけであり、楽天と中国テンセントの提携発表の方が「もっと深刻な問題をはらんでいる」と指摘しています。

楽天=テンセント提携、問題は個人情報流出だけではない

フジテレビ(CX)や東北新社など、放送業者に関する「外国人出資」がやたらと問題になっていました。確かにメディアが外国勢力に支配されるのは良くありません。FOXグループのように、「それぞれの国のナショナリズムを徹底して煽るのが金もうけ」というような悪質業者が入ってきては大変だからです。

ですが、こうしたケースは、実は株主総会における議決権付与をするかどうかでコントロールできます。ですから、問題のほとんどは事務的な手続きにおける形式論なのですが、それでも、監督官庁の権限というのは、形式を整えさせる中で行使されるので、この種の騒ぎは収まりません。

ところで、このCXや東北新社の問題と比較しますと、楽天グループが中国IT大手の騰訊控股(テンセント)子会社から出資を受けたという問題は、はるかに深刻です。

この問題ですが、まず顧客情報などがテンセントを通じて中国当局に流出する懸念が拭えないという問題があります。楽天は通販ビジネスのマーケティングだけでなく、金融、旅行、そして最近では携帯電話のキャリアとしても活動しており、膨大な個人情報を抱えています。これが、国外に流出しては大変です。

けれども、例えば中国政府として、わざわざ日本の通販や携帯の消費者データを集めるということの意味は、それほどないと思われます。例えば中国批判を繰り返している人をブラックリスト化して、中国に入国しないようにさせたとして、そこにそれほどの意味があるとは思えません。また、個人情報を中国の企業がマーケティング目的で悪用するとして、それが即座に大きな脅威になるとも思えません。

問題は、楽天グループが展開しているビジネスは、日本の中でも収益が見込まれ、また成長の可能性がある産業だということです。過去はともかく、これからの日本における小売りやサービスにおける主要産業、有望産業といって構わないでしょう。

にもかかわらず、楽天は国内で資金調達ができなかったわけですし、結果的に「うまみ」を見いだしたテンセントが出資をしたわけです。こんなことを続けていると、日本経済は益々衰退してしまい、多少なりとも競争力の残っている部分は、その「うまみ」を海外勢に持って行かれるだけとなります。

テンセントを敵視するのは簡単ですが、今回の事件の本質はそうではありません。問題は、楽天が必要としている資金について、日本国内では調達ができなかったということです。そのことの意味を考えると、やはり恐ろしい感じがします。

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