IOCとの契約を公開せよ。東京五輪「辞退で補償金1200億請求」の真偽

 

この問題を「怪談」にしないための対策は非常に簡単です。

それは、日本サイドとIOCの間の契約を公開することです。カネが絡む決定をするのであれば、そのカネの条件を明らかにするのは当然です。先ほどのたとえ話で言えば、食材納入業者の営業担当者(この場合は2013年の安倍、猪瀬、竹田、および条件改訂があったとして、2020年の安倍、小池、森、山下)が、食材納入業者の社長(この場合は日本の納税者)に何も断らずに、ある取引先のレストランに対して「宴会がキャンセルになった場合の売り上げを全額補填」などという契約を結んでいたら、即刻クビであるだけでなく、民事告発にプラスして刑事(背任)起訴されます。

こういった例示をすると「仮に納入する食材について、汚染や消費期限切れが明らかになったのなら納入業者の責任」という反論が可能かもしれません。ですが、新型コロナの問題は世界全体の問題であり、「開催国日本の感染が止められないという日本の不手際」のために中止というロジックにはならないと思います。

とにかく、五輪中止も、食材納入業者の背任も同じことです。一方的に屈辱的な契約を結んでいるのなら、結んだ当事者が悪いのですが、その前に、ともかくまず条件がどうなっているのか、国民に明らかにするべきです。反対デモなどは、それからではないでしょうか。「開催中止を言い出したら1,200億払わされるらしい」などという怪談話というのは、いい加減に止めていただきたいと思います。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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