この問題を「怪談」にしないための対策は非常に簡単です。
それは、日本サイドとIOCの間の契約を公開することです。カネが絡む決定をするのであれば、そのカネの条件を明らかにするのは当然です。先ほどのたとえ話で言えば、食材納入業者の営業担当者(この場合は2013年の安倍、猪瀬、竹田、および条件改訂があったとして、2020年の安倍、小池、森、山下)が、食材納入業者の社長(この場合は日本の納税者)に何も断らずに、ある取引先のレストランに対して「宴会がキャンセルになった場合の売り上げを全額補填」などという契約を結んでいたら、即刻クビであるだけでなく、民事告発にプラスして刑事(背任)起訴されます。
こういった例示をすると「仮に納入する食材について、汚染や消費期限切れが明らかになったのなら納入業者の責任」という反論が可能かもしれません。ですが、新型コロナの問題は世界全体の問題であり、「開催国日本の感染が止められないという日本の不手際」のために中止というロジックにはならないと思います。
とにかく、五輪中止も、食材納入業者の背任も同じことです。一方的に屈辱的な契約を結んでいるのなら、結んだ当事者が悪いのですが、その前に、ともかくまず条件がどうなっているのか、国民に明らかにするべきです。反対デモなどは、それからではないでしょうか。「開催中止を言い出したら1,200億払わされるらしい」などという怪談話というのは、いい加減に止めていただきたいと思います。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋)
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