IOCとの契約を公開せよ。東京五輪「辞退で補償金1200億請求」の真偽

 

NBCとIOCの契約に関して、その詳細は公開されていません。ですが、NBC(NBCユニバーサル)は、コムキャストというナスダック上場企業の傘下にありますから、厳格なコンプライアンス(日本式の形式だけではなく、最悪の事態を想定して訴訟に耐え得る体制)を維持しているはずです。

ということは、2020年の時点でスポンサーとの契約再交渉を行った際に、2つの点、つまり1点目としては、2021年に契約を移動する際の条件としては、NBCとスポンサーが合意できるような合理的なものであったこと、そして2点目として、仮に2021年の開催も中止となった場合に、NBCもスポンサーも合意できるような措置が取られていたことは、間違いないでしょう。

つまり、2021年に五輪が開催されれば、NBCには広告収入が入る、そして中止されれば入らないが、その場合はNBCは巨額な赤字を背負うわけでは「ない」という条件になっているはずです。これは2013年の当初の契約でそうなっているのか、2020年に再交渉したのかは分かりませんが、いずれにしてもNBCとIOCの間では、中止の場合はNBCが損をしない契約になっているはずです。独占放映権を夏季五輪1回分延長するといった条項になっている可能性もありますが、恐らくは1回分、つまり1.2ビリオン、要するに1,300億円程度が返金されるということだと思われます。

その場合は、IOCとしては大損になります。ですが、仮にNBCへの補償が1,300億だとして、これはビジネスで言えば売り上げがキャンセルされただけです。仮に中止の責任を日本に押し付けたとして、その金額を丸々であるならば、これは正に「ぼったくり男爵」ということになります。宴会のキャンセルが出て、売り上げ100万円がパーになったとして、そのレストランが食材の納入業者に100万払えと言っているようなものだからです。

それはそうなのですが、IOCというのは、「国際オリンピック運動」という大義名分の下で、インフラ整備からドーピング防止の研究まで色々な活動をしています。幹部の報酬について、例えば会長の給料は年額22万5,000ユーロ(約2,500万円)という報道がありますが、その下に役員だけでなく多くの常勤職員を抱えていますから、年額の固定費は大きいわけです。そのコストをまかなう一番の収入が消えるとなれば、辛いのは間違いないでしょう。ですから「可能な限りはぼったくり男爵」をやらないと、組織が潰れてしまうということはあると考えられます。

日本側としては、これは認められる話ではありません。ですから、2013年に招致が決まった際に交わした(であろう)契約書、そして2020年から2021年に延期を決定した際の契約改訂においては、当然のことですが、日本側としては理不尽な金銭的な責任を負わないように最大限の主張がされ、その上で、日本側とIOCが合意できたと信じます。

問題は、その契約条件がオープンではないことです。ですから、中止の際の金銭的負担について、まるで「丑三つ時にあのお墓の後ろに行くとオバケが出る」とどという言い方で、「日本が中止を言い出したら1,200億円払わされるらしい」などという「怪談」が話題になっているわけです。

話しているだけなら、面白い怪談話で済みますが、実際に「カネを払え」などと言われたら正に時限爆弾の炸裂ということになります。到底認められるものではありません。

そもそも、感染拡大の状況を検討した上で五輪の開催を決定するというのは、国にとって当然の決定です。仮に人命を優先して中止した場合に、巨額な請求が来るとか、未来永劫オリンピック招致は不可能というのは、国際常識、人間の常識に照らして認められるものではありません。

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