IOCとの契約を公開せよ。東京五輪「辞退で補償金1200億請求」の真偽

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新型コロナ感染症の収束が見込めず国内外で五輪開催中止を求める声が高まる中、「開催辞退を申し出た場合、IOCから莫大な補償金を請求される」という風説がまことしやかに語られています。はたしてそれは真実なのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、そのような噂話が「怪談」のように語られることを危惧するとともに、政府や開催都市である東京都が全国民に今すぐ明らかにすべきことを記しています。

東京五輪をめぐるカネの話を怪談にするな

東京五輪の開催問題をめぐって、賛成反対さまざまな意見が飛び交っているようです。ちなみに、アメリカの雰囲気ですが、現時点では五輪そのものがそれほど話題になっていません。NYタイムスや、ワシントンポストが開催への悲観論を掲げ始めましたが、こうした論説は「一部のニュースマニア」にしか届いていないのが現状です。

アメリカの場合は五輪の独占中継権をNBC放送一社が保有しているので、NBC以外のTV各局は五輪に対しては冷ややかですが、これは独占中継権を持っていない中では、通常の開催に際しても同じですから、特に何かが起きているというわけではありません。

問題は独占権を持っているNBCですが、今でも画面の右下隅に小さく五輪のロゴを表示していますし、時折「代表選手の決意」インタビューを流したりしています。ただ、全体的には全く盛り上がっていないと言うのが実情です。NBCにしても、ネットには開催に疑問を投げ掛ける種類の論説を掲げていますから、態度としては決して開催へ向けて強硬というわけではないようです。

それはともかく、五輪の開催問題については、現状としては非常に不透明となっているのは事実です。漠然と不透明であるだけでなく、この問題は一種の怪談になっています。

それは、問題の所在が明らかでない中で、様々な憶測が出たり入ったりしているからです。今は隠して先送りしていても、やがては問題が起きることは不可避であることを考えると、「一種の怪談」としか言いようがありません。

怪談の何か恐ろしいのかというと、それは「カネ」の問題です。問題としては確かに複雑であるようです。まず、現時点では、ある俗説が大声で叫ばれています。それは、日本サイドが開催中止を言い出したら巨額な補償金を取られるとか、その場合に、未来永劫、五輪の開催は二度とできないだろう、などという言説です。

まず、巨額な補償金という説ですが、まことしやかに「五輪の収入の過半は、米国のNBCの放映権料から来る。だから、五輪中止の場合は放映権料の補償をしなくてはならず、日本が言い出した場合には、その分が日本に請求される」ということが言われています。その金額は1,200億円だなどと言う報道もあります。怪談とするには十分な金額です。

では、NBCの側はどうなっているのかというと、まず2020年の3月に7月の五輪が1年延期という決定がされたわけですが、この時点では既に2020年夏の五輪放映に伴うCMの販売はほとんどが成約していたようです。NBCは強気でキャンセル不可というような販売条件があったらしく、スポンサーは一斉に反発して再交渉の結果、2020年のCMはキャンセルとなりCM契約は2021年の五輪に延長されています。

ちなみに、NBC(コムキャスト・グループ)は自社ブランドと、ディスカバリーとのJV(ジョイントベンチャー)での2種類のチャネルで、ストリーミング中継も実施する契約をIOCと交わしています。ですから、NBC地上波、NBCストリーミング、ディスカバリー/NBCのJVでのストリーミングという3つのチャネルでの放映権をNBCは買っているわけであり、その3チャネルでの広告収入で利益を稼ぐビジネスモデルとなっています。

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