新型コロナの感染爆発が止まらず死者の火葬が間に合わないなど、インドの惨状が連日伝えられています。現在の大阪はそんなインドより酷い状態にあることを示す恐ろしい数字が最近明らかになりました。直近7日間の人口当たり死者数がインドを大きく上回っているのです。メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんは、こうした数字のインパクトとインドからの映像を正しく組み合わせて大阪の惨状を伝え、「わがこと」として受け止めさせるのがニュースの役割であると主張。この1年の政府の無策だけでなく、メディアの責任にも言及しています。
組み合わせのこと
数字というものは、比較対照の組み合わせ次第で随分と違って見える代物である。このところ連日、インドにおける感染爆発の惨状がテレビなどで報道されている。そういったニュースに触れるたび「何という現実か」とそら恐ろしくなっているのは自分だけではないであろう。
日々増え続ける死者の数に火葬が間に合わず、どうしようもないので原っぱなどで死体を焼く。まさに地獄の沙汰である。これに比べれば日本はまだまだましな方である。そう思ってそっと胸を撫で下ろす自分がいる。
インド16.5人
大阪 22.6人
この数字を見た途端に撫で下ろした筈のものが恐怖と驚きとともにムカムカと喉から口へと逆流してくるのを感じた。実はこの数字は5月8日時点での直近一週間における人口100万人当たりの死者数である。データはWHOの調査をもとに札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所ゲノム医科学部門が解析したものである。(※編集部注:11日現在の同解析値では、インド17.2人に対し、大阪府26.5人)
この数字の通りなら、人口比的にはインドよりも多くの人間が大阪ではコロナで死んでいることになるのである。この数的事実と前述のインドの惨状を合わせて考える時、日本の現状の深刻さがいやでも見えて来るのではないだろうか。しかもインドと大阪を比べた場合、公衆衛生観念、医療提供体制、環境要因等全てにおいて大阪が不利ということはとても考えられない。いよいよただならぬことである。
ニュースもただショッキングな映像を流すだけでなく、ただ驚くべき数字を羅列するだけでなく、こういった映像と数字を有機的に組み合わせて報道すべきなのである。誰だってこの種のニュースはあまり見たいというものではないであろう。それでもなお報道する価値があるとすれば、誰もがリアルに我が身とその周辺に置き換えて想像する、その一助となることである。コロナは「ひとごと」ではなく「わがこと」である。インドの嘆きや叫びは大阪のそれと同じなのである。
変異株N501Yは、大阪を巨大中心核として波動し全国に周圏的に拡がって行った。そして今、東京に最大の中心核が生まれようとしている。そう、東京にとっても「わがこと」なのである。二つの核から生まれる大波は干渉を繰り返してはまた繰り返し、やがては全国を丸呑みするほどにもなりかねない。くれぐれも「わがこと」として身を慎みたい(つまりは身を守りたい)ところである。
残念ながら政府は当てにならない。5月10日の総理の国会答弁を見て確信した。おそらくワクチン接種の一重一段構えでそれ以外は無策であろう。東京五輪に関しても行き当たりばったりである。
それにしても、今さらではあるが国民に対して1年以上もの間、ただただお願いしかできない政府とは何とも情けない限りではないか。実際やっていることはこの1年というもの全くと言っていいほど変わっていない。それどころか下手をすると悪くなっている。そろそろ忍耐も限界である。こう感じるのはおそらく自分だけではないであろう。
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