右派も左派も。日本人のほとんどが知らぬ在沖縄米軍基地の大きな存在意義

 

まず台湾の「ねじれ」の第1は、国民党と共産党の問題です。中国共産党からすれば、台湾に逃げた蒋介石の国民党とは、国を争う全面内戦を戦った仇敵であるわけです。にも関わらず、現在の台湾政局においては、国民党イコール親中派になっています。

反対に、台湾の政局から見れば、現在の蔡英文総統率いる民進党というのは、国民党の蒋介石が過酷な戒厳令支配を行なった歴史へのアンチとして登場している政治勢力です。例えば、蒋介石一派が逃げてくる前から台湾に暮らしていた人々である内省人の系統であり、つまりは右派ファシストの被害者といえます。

その民進党というのは、中国共産党から見れば「敵の敵」ですし、憎い国民党の弾圧を受けた被害者という位置づけになります。そうなのですが、中国共産党は民進党を敵視しています。台湾独立、台湾人による台湾という概念を認めないからです。

では、どうして仇敵である共産党と国民党が手を組めるのかというと、国民党には、今は形骸化したとはいえ「本土奪還(光復祖国)」というスローガンがあるからです。内戦の敵ではあるが、とにかく中国本土を統一し、そこに台湾も含めるという「思想」においては、共通であり手を組めるというのです。

これは、ハッキリ申し上げて「モラルハザード」としか言いようがありません。とにかく、この「ねじれ」、つまり共産党と国民党が一緒になって台湾土着の被害者たちを「独立派」として弾圧するという構図になっている、この構図については、どちらに味方するにしても理解しておかねばならないと思います。

2つ目の問題は、現在の台湾が極めて親日的だということです。日本から見れば、大変に結構な、そして有難いことですが、その原因をよく理解しておくことは大切です。理由は2つあります。1つは、朝鮮半島統治と比較すると、台湾統治は比較的成功したからです。鉄道や郵便、治水といったインフラ投資に加えて、日清戦争の結果として日本が統治を始めた時点で、大変な問題であった麻薬汚染という社会問題を、極めて現実的な効果のある政策で抑え込んだことも大きかったようです。それでも、日本統治時代には反対派への過酷な弾圧などはありました。

けれども、そうした日本支配の「汚点」は、戦後になって中国本土から逃げ込んできて全土に戒厳令を敷いた蒋介石の国民党の悪行が「上書き」してしまったのでした。つまり、蒋介石政権の非道さに比べると日本支配は、はるかに「まし」に思えたということです。この問題ですが、どうして「ねじれ」なのかというと、これでは韓国と手が組めないからです。韓国と台湾が軍事外交的に強く連携していれば、効果は絶大であるはずなのですが、これが上手く機能しないのです。

もっとも、1990年代までは、化粧をせずバリバリ職場に進出する台湾女性のカルチャーと、ルッキズム一色の韓国女性の間では、全くお互いが水と油という感じがあったのが、21世紀になるとそうしたカルチャー面での距離は、かなり縮まったようですので、台韓関係は潜在的な近さがあるという見方もできるので、単純化はできません。ですが、両国がなかなか「手を組めない」というのは、問題を複雑にしています。

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