時を同じくして、北朝鮮の国営・朝鮮中央通信(KCNA)は6月20日に、「韓国側へ向けて反韓のビラを散布する準備が進んでいると報じ(ここでは配布ではなく散布となっている)、反韓ビラの準備を進める人々の映像(画像だったか)を紹介している。また、朝鮮労働機関紙・労働新聞の紙面にも、文在寅大統領の顔が印刷されたビラの上に、たばこの吸い殻や灰が積まれた写真が掲載されたが、正体不明の飲み物を飲んでいる写真が印刷されたこのビラには「(彼は)すべて食べてしまった。南北合意まで」と記されていた。
これまた奇天烈(きてれつ)な話である。相手側に飛ばすビラの内容をあらかじめ知らしてしまうとはどういうことか。それもインパクトのない、品のない絵柄である。
ビラの漢字語である「伝単」とは「戦時において敵国の民間人、兵士の戦意喪失を目的として配布する宣伝謀略用の印刷物(ビラ)。その語源は、物事を伝える紙片という意味の中国語である(フリー百科事典「ウィキぺディア」)とあるが、事前に手の内を見せてしまうとは。しかも、これだけの大量のビラを用意しており、これから撒くぞと脅かしても、誰も驚きもしないし、ずいぶん汚い、まずいビラなくらいにしか思わないだろう。
案の定、このビラは今もって韓国側には飛んできていないという。北朝鮮はこの間抜けな大量のビラを製作するのにどれだけの上質な紙類と印刷具を使用したのだろうか。
一説には、このようなバカげた始末により年末に海外に発送する北朝鮮の広報宣伝カレンダーや「画報朝鮮」も発行もできなくなった、との噂もあったが、あながち嘘とは言い切れない。
北朝鮮はこのビラ作成にどれだけの巨費を投じたかわからないが、今回の事態で思い出すのは、1984年夏にソウルは大洪水に見舞われ、これに対し北朝鮮は韓国にセメントや衣類、医薬品に混じって、大量のコメも援助した。この時、北朝鮮の全土から集められたコメは、さらに精米され目標の援助量までには届かなかったとも言われているが、この韓国への援助支援米の供出により、北朝鮮はさらに食糧不足に陥ったことは、あまり知られていない事実である。私の資料室にはこの時、北朝鮮から支援された物資の見本がある。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)
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