軍事アナリストが首をかしげた日本の水際対策と政治の機能不全

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3週間後に迫った五輪開幕に向け、いよいよ本格化した各国選手団の入国。7月1日に来日した166人については、全員新形コロナウイルス陰性が確認されたとのことですが、日本の「水際対策」は機能しているのでしょうか。今回のメルマガ『NEWSを疑え!』では軍事アナリストの小川和久さんが、その有効性を「政治」が自ら検証する必要があると指摘。さらにメディアに対しても、視聴者や読者の立場で水際対策の実態についてチェックするのが務めだとし、具体的な検証法を提案しています。

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嗚呼!日本の水際対策

6月28日、菅義偉首相は羽田空港の感染防止対策などを視察しました。首相は、「今後、オリンピック・パラリンピックの選手や関係者の入国が本格化してくる。選手は、入国前に2回、入国後は毎日検査し、関係者も外出先を限定して、国民とは接触できないような厳格なルールを適用する」と、徹底した対策を指示したとされています。

そのニュースを見ながら、日本の政治は機能しているのだろうかと考え込まざるを得ませんでした。

入国に関する水際対策ということでいえば、例えば、6月24日号の編集後記で紹介したマンハッタン在住の友人から寄せられたケースがあります。

「2回のファイザー社のワクチン接種を済ませて6月初めに日本に帰国した友人から、日本という国は、接種を済ませて、感染率も落ち着いている米国から帰国した国民のことをまるで犯罪者のように扱う理性も科学的データも通じない国だから、今の時期は帰国しないほうがいいと言われました(笑)。相当に不快な思いをさせられたようです」

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これについては帰国したばかりのカリフォルニア在住の知人からも同様の指摘がありました。

「まさしく!マンハッタンのご友人のおっしゃる通りです。私の入国時の投稿にも書いてありますが、入国の関所を何度も通過しないと入国出来ません。どれだけ無駄があり、どれだけ人件費がかかり、どれだけ紙印刷が必要なのかと日本のデジタル化の遅れにもに呆れてしまいました。私が住んでいるカリフォルニア州もワクチン接種が7割終わり日常を取り戻している中、日本入国時にはワクチン接種済みは無関係です。複数のアプリも1つにまとめられるのにと思います。入国後の14日間、まるで悪人扱いです(アメリカで犯罪者が足にGPS付けるのと同じですね)。とにかく酷すぎる水際対策です」

日本入国について、この知人は以下の5つの関門を通過したそうです。

  1. アメリカで陰性証明
  2. 羽田で抗体検査
  3. 指定の宿泊所で3日間待機
  4. 3日後、新たに抗体検査。結果が陰性だったので帰宅
  5. 14日間の残りを自宅待機

しかし、少なくとも1.から5.までのステップが水際対策として有効なのか、どのくらいすり抜けられているのか、追跡は徹底しているのか、入国者に与える不快感はどの程度のものか。ウガンダ選手団のケースを見ての通り、民間業者に委託した業務を役所がチェックできていないようなので、政治が自ら検証してみる必要があると思います。

副大臣、政務官、いや政党のプロジェクトチームでも構いません。入国者の目で検証するのは国民への責務だと思います。

メディアもチェックしてみたらどうでしょうか。政治がアテにならないのなら、自ら読者の立場で検証するのは務めだと思います。何人かが別々の国から入国し、克明なレポートにしてみると問題点が浮き彫りになり、政府も襟を正さざるを得ないはずです。(小川和久)

image by: 首相官邸

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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