マスコミが伝えない米バイデン政権、中国と露へのハンパない脅し

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日本のメディアは、コロナの感染拡大とオリンピックの話題に紙幅や時間を割き、なかなか国際情勢について深く踏み込みませんが、米中ロの大国は、いまこの時も自国の利益や安全のためのせめぎ合いを続けています。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんは、中国が米国にどう反発したかに重きを置いたマスコミ報道とは一線を画し、中ロに対し「激しい要求」を突きつけるバイデン政権の最近の動きについて詳しく記し、見習うべき点があると政治家、官僚に訴えています。

米国の脅しはハンパじゃない

日本国民の頭がコロナとオリンピックに占領されているのを横目に、バイデン政権の戦略的な布石が中国を包囲し、ロシアを圧倒しています。このところの米国の動き、専門家には結構気になるものが続いています。

まず、シャーマン国務副長官の訪中。相互主義ということで、同じランクの謝鋒外務次官と会談したことになっていますが、外交トップの王毅外相への表敬訪問こそ今回の訪中のゴールだったと言ってよいでしょう。

マスコミ報道では、一連の会談で中国側がアメリカの対中政策を批判するなど、激しい応酬がかわされたと伝えられています。しかし、実際にはシャーマン氏のほうが謝氏との会談で対米姿勢を改めるよう求め、「イエスかノーか」と王毅氏に回答を迫ったと思われます。それに対する中国の回答は、駐米大使に発令された秦剛氏のマスコミへのコメントです。

「両国は社会制度や発展の異なる大国として、新たな時代の付き合いを模索している。困難や挑戦はあるが、同時にチャンスや潜在力も秘めている」

中国としては米国と事を構える気はない、関係強化に努めたいと言っているのです。訪中したシャーマン氏の口から、「世界の強国が中国と同じルールで中国に対して行動したら、中国は多くの国を相手にすることになり、すぐに力尽きる。南シナ海など、ルールを勝手に変更するのは中国のためにもならない」くらいの強い言葉が発せられたことは充分に考えられるのです。

フィリピンのドゥテルテ大統領の米比地位協定破棄撤回(29日)についても、会談したオースチン国防長官が何を言ったか気になるところです。7月29日にはブリンケン国務長官がインドを訪問し、続いて今月はカマラ・ハリス副大統領がベトナムとシンガポールで両国のトップとの会談に臨みます。一連の動きによって、特に南シナ海をめぐる中国への包囲網は、いっそう強化されることになります。

ロシアに対してはバイデン大統領が直接、パンチを繰り出しています。バイデン氏はロシアのプーチン大統領に、ロシアのハッカー集団の米国企業に対するサイバー攻撃をやめさせるよう求め、その直後、ハッカー集団は動きをピタッと止め、姿を消しました。これについては、米国がサイバー攻撃した、プーチン氏がやめさせた、ハッカー集団が自ら撤退したという3つの見方がありますが、バイデン氏の発言がきっかけだったことは間違いありません。

その前の首脳会談では、バイデン氏はプーチン氏に対して米国は世界最高のサイバー攻撃能力を持っていると明言しました。米国を怒らせないほうがいいよという訳です。

このように、米国の脅しはハンパではありません。ロシアを圧倒し、中国に対しても着々と包囲網が強化されているのです。それをうまく利用しているのが中国の習近平国家主席ですから、これまた驚くべきしたたかさです。習近平氏は、米国の包囲網を口実に国内の強硬派と世論を抑え、政権を維持するために巧みに使っている面があるのです。

米国と中国、ロシアの動き。とてもではないが、日本が真似できるレベルではありません。志ある政治家と官僚の皆さん、ひとつふたつでもよいですから、学べるところを身につけたいものです。(小川和久)

image by:BiksuTong / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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