世界的エンジニアが提言。深刻な「救急患者たらい回し」を解消する最適解

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新型コロナ感染症が猛威を振るう中、救急患者の搬送先が決まらない「救急搬送困難事案」の増加が深刻化しています。このような事態の解消法についての考察を巡らすのは、「Windows95を設計した日本人」として知られる米シアトル在住の世界的エンジニア・中島聡さん。中島さんは自身のメルマガ『週刊 Life is beautiful』で今回、プロの目線でもっとも現実的なアプローチ法を提示するとともに、医療界におけるデジタル・トランスフォーメーションのあり方を説いています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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救急搬送支援アプリ

東京都で、自宅療養中の人が症状が悪化したので救急車を呼んだところ、受け入れ先が見つかるまで、救急隊員が100箇所以上に電話をしなければならず、結局入院先が見つかるまで8時間かかった、という記事を受けて、Twitterで次のようにつぶやいたところ、大きな反響がありました。

残念なことに、コメントの多くが「医療のことを理解していないエンジニアの独りよがり」というネガティブなもので、日本のインターネット特有の「嫌な部分」を象徴する典型的な「炎上」でした。

ブログを長年書いていて、「炎上」には慣れっこなので、精神的に傷つくことはありませんが、それだけ日本には他人を傷つけることでしか自分の存在意義を見つけられない不幸な人が多いのかと思うと、とても悲しくなります。

しかし、そんな中にも、「こんなアプリが既にある」「アプリはあるけど使われていない」などの建設的な情報も集まって来て、とても良い勉強になりました。

統合救急搬送情報共有システム(fujitsu.com)」は富士通が開発したクラウドを利用したアプリです。ウェブサイトを見る限りは、一見しっかりと作られているようですが、実際にどのくらい利用されているのか、役に立っているのかは不明です。

大阪府救急医療搬送支援・情報収集・収集分析システム(ORION)の開発と課題(mhlw.go.jp)」は、大阪市で2013年に導入されたORION(Osaka emergency information Research Intelligent Operation Network system)というシステムにより、搬送困難例(=たらい回し)の回数を実際に減少させることが可能になったという、良い事例の紹介です。

救急車の“たらい回し”を解消せよ!佐賀県のiPadを使った取り組み」は、佐賀県で救急車50台にiPadを配備し、ネット経由で病院の受け入れ状況を把握できるようにした仕組み(99さがネット)の紹介です。これが導入されるまでは、救急車は片っ端から病院に電話をかけて受け入れてもらえる病院を探すしかなかったのが、この仕組みの導入で、その手間が大幅に減ったそうです。

素晴らしいのは、病院側の手間を省略するため、過去24時間の搬送実績から、病院の受け入れ状況を予測する仕組みを導入している点で、これはとても参考になります。このシステムの導入により、「搬送時間を平均で1分短縮した」「運営費を年4,000万円節約した」などの結果を出しており、他の自治体の人たちにとっても良い教材になると思います。

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