まだNYは大丈夫。在米日本人が偶然遭遇したこの街の「真の魅力」

 

(3)マイケル・マッケルロイさん

ところで、このイベントのメイン演者は、ブロードウェイ・インスピレーショナル・ヴォイス(Broadway Inspirational Voices)という1994年に立ち上がった演劇の団体です。

ミュージカルとゴスペルを融合した演目を得意としてまして、創業者であり代表はご自身もミュージカル俳優であるマイケル・マッケルロイさん。

友人がエイズで大変だったので、何か精神的癒しになることをしたいと考えブロードウェイ・インスピレーショナル・ヴォイスを立ち上げたそうです。

20年以上活動してきましたが、コロナで劇場は閉鎖。メンバーたちも演じられる場所を一瞬にして失い、また仕事がなくなり失業保険で暮らすなど大変な状況になったのです。

なので、そもそもこのリトルアイランドではじめて開催される有料コンサートは、本当にそんなことが実現可能かどうかまだまったく誰にもわからなかった今年1月に企画が立ち上がり進めてきたものなのです。

なのでコロナ禍を乗り越えたニューヨーカーの方々を勇気づけ、希望を持って新しい未来を切り開いていこうというメッセージが込められたものだったのです。

ちなみにマッケルロイさんはリトルアイランドのアーティストインレジデンス、要するにお抱えアーティスト。リトルアイランド自体もコロナでオープンが延期されてましたが、ステージを作るのでそこで何かをやるために雇われたというわけです。

そんなマッケルロイさんですが、20年以上代表を務めてきたブロードウェイ・インスピレーショナル・ヴォイスから抜けてミシガン州の大学でシアター専門学科の先生になることが決まりました。

今回のイベントはニューヨークの復興を祝うものでもあり、マッケルロイさんのお別れの会、新たな旅の幸せを願うものでもあったわけなのです。

そんな背景があってのノーム・ルイスさんによるGo The Distanceの熱唱。

せっかくなので最後に日本語対訳で歌詞をご紹介しますが、これがまさにニューヨークの魅力の本質ではないかと思います。

NYという街を特別なものにしているのは、この街を舞台にして活動を続ける人々、例えば、アーティストの方々、ミュージシャンの方々、様々なパフォーマーの方々、そうした方々を支える関係者の方々。

コロナ禍のような困難の中でも前を向きより多くの人々に勇気や希望、そして感動を与えてくれるそんな人々こそがニューヨークの本当の魅力だと思いました。

ちなみにこのイベントは2日間開催されましたが、2日ともラストのトリは、ミュージカル『ウィキッド』の名曲の1つ「ディファイング・グラビティ(Defying Gravity)」。

ウィキッドはオズの魔法使いのサイドストーリーと言われているお話で、主人公の魔法使いのエルファバが、顔が緑色だからという理由で、周りの人たちに相手にされない孤独な女の子。ある日、皆が尊敬する魔法使いから招待状が届いて会いに行くことになって…という物語が描かれていますが、このミュージカルが伝えているメッセージの1つには、「たとえ、周りの人たちに理解してくれなくても自分の可能性を伸ばしていけば、夢を叶えられるかもしれない」というもの。

子供たちに見せたいミュージカルですが、実際にみにいくと子供たちよりも親御さんが大感動しているシーンにでくわす大人がみても感動するミュージカルなのです。

そんなミュージカルの名曲を2日間のイベントの最後にもってきているところに、作り手の思いを感じます。

毎回ニューヨークからの最新情報を届けてくださる、りばてぃさんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • まだNYは大丈夫。在米日本人が偶然遭遇したこの街の「真の魅力」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け