デルタ株が奪う日本人の優位性。ファクターXの正体とコロナ安全神話の終焉

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なぜ日本の感染者・死亡者数は欧米より極端に少ないのか?コロナ禍の初期から議論を呼んでいた謎の「ファクターX」について、重要な論文が発表されていたことをご存知でしょうか。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では、「Windows95を設計した日本人」として知られる米シアトル在住の世界的エンジニア・中島聡さんが、東京大学などの感染症の専門家らが今年6月に発表した論文と、ファクターXがデルタ株には無力であるという説を紹介。さらに現在の状況を考えれば、日本中にデルタ株が広がることは避けようがないとの見方を示しています。

プロフィール中島聡なかじま・さとし
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

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ファクターXとデルタ株

去年の春、世界中で新型コロナの大流行が始まった時、なぜか日本を含むいくつかのアジアの国では感染者がそれほど増えず、欧米で起こったような医療崩壊を免れることが出来ました。その理由に関しては、「握手をしない文化」「マスクをするのに抵抗がない」「過去の似たようなウィルスが流行したことがある」など諸説ありましたが、日本人を新型コロナから守る何らかの要素(ファクター)があることが確実なため、それを「ファクターX」と呼ぶようになりました。

インドもそんなファクターXに守られていた国の一つでしたが、デルタ株がインドで大流行をした時に、「ひょっとするとデルタ株にはファクターXは有効ではないのかも知れない」と危機感を覚えたのは私だけではないと思います。

心配した通り、日本ではデルタ株が過去にない勢いで広まっていますが、

  • ファクターXとは何なのか?
  • ファクターXはデルタ株に有効なのか?

の二つの疑問に同時に答えてくれる論文「ウイルスの感染力を高め、日本人に高頻度な細胞性免疫応答から免れるSARS-CoV-2変異の発見」が、米国の科学雑誌「Cell Host & Microbe」に6月14日に発表されていたことを今になって知りました。

論文を執筆したのは、東京大学、熊本大学、東海大学、宮崎大学などの感染症の専門家たちで、日本語のプレスリリースも日本医療研究開発機構から出ているので、かなり信頼できる研究と見て良いと思います。

これによると、日本人の6割が去年流行した新型コロナウィルスのスパイクタンパクに反応するHLA(人白血球抗原)の一種「HLA-A24」を元々持っており、それがファクターXの正体だったそうです。

これだけでも、素晴らしい価値のある論文だと思いますが、さらにこの論文は、デルタ株と呼ばれるB.1.617系統が持つスパイクタンパクには「L452R変異」と呼ばれる変異があり、これが「HLA-A24」による免疫効果を無効にする働きを持っていることが分かったそうです。つまり、ファクターXはデルタ株から日本人を守ってくれないのです。

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