性暴力や拷問、虐殺も。タリバン報道の裏で進行するアフガン以上の悲劇

shutterstock_1924546175
 

収束の見えないアフガン情勢が連日大きく報じられていますが、アフリカ東部に位置するエチオピアが大混乱に陥っているという事実をご存知でしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、内戦状態にあるエチオピアの現状と複雑に絡んだ各国の思惑を解説。さらに今後その緊張が高まった場合には、周辺地域を巻き込んだ国際紛争に発展しかねないとの懸念を示しています。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

アフガンだけじゃない。世界を揺るがす“もう一つの国内紛争”と国際情勢の裏側

国際社会がタリバンによるカブール陥落とその後のアフガニスタン情勢の混乱に驚く中、よく似た状況が遠く東アフリカの地で進行しています。

それはHorn of Africa(アフリカの角)と呼ばれる東アフリカの要の位置にあるエチオピアです。東京オリンピックでエチオピア出身の長距離ランナーたちが快挙を成し遂げて歓声を集めているころ、エチオピアの人たちは非常に残虐な争いの真っただ中で苦しむという状況でした。

昨年11月4日に勃発した政府軍と北部ティグレ州の武装勢力TPLFとの間の武力紛争は、11月29日にティグレ州の州都メケレが政府軍によって陥落し、TPLFのリーダー、ゲブレミカエル氏ほかが山中に逃げ込んだことで、終戦を迎えたと思われていました。

しかし、逃亡前にゲブレミカエル氏が言い残したように、「TPLFは決して停戦など行わず、最後の一人になるまで政府およびアビィ首相の横暴に抵抗する」という言葉はその後現実化しました。

ゲリラ的な戦いを繰り返してメケレを奪還したTPLFは、リーダーであるゲブレミカエル氏が大けがを負うという事態に見舞われましたが、勢いを取り戻し、2021年6月以降、政府軍への反攻を本格化させました。

6月にはコロナ理由で遅れていた総選挙が行われ、アビィ首相率いる繁栄党(Prosperity Party)が圧勝し、盤石の勢力基盤を手に入れたと感じた政府は、TPLF掃討作戦を再開し、その後、各地で非常に激しい戦闘が繰り広げられています。

その結果、各地で政府軍そしてTPLF双方による人権侵害行為が繰り返されており、多くの犠牲者が出ている模様です。

6月以降の戦闘で情勢が大きく変わったのが、TPLFが息を吹き返し、ティグレ州の支配を取り戻したことを機に、アムハラ州およびアファール州に駐留していた政府軍と州軍を駆逐し、あと少しで首都アジスアベバに到達する勢いです。

ここ最近は、アビィ首相に近く統率力が高いと言われる首都近郊の政府軍と、TPLFに打ち負かされたアムハラ州の州兵が協力してTPLFの侵攻を食い止めているとの情報がありますが、そこにアムハラ州の拡大主義勢力が第3の勢力として、政府軍およびTPLF双方に戦いを仕掛けているらしく、ここにきて情勢が緊迫し、非常に複雑化しています。

電話やインターネット回線という情報インフラが、政府によって意図的に遮断され、北部ティグレ州をはじめ、TPLFが奪還したと言われているアムハラ州やアファール州でも情報発信が妨害され、かつ国内外のメディアのアクセスも政府軍が阻止しているせいで、伝えられる情報はほとんどアビィ政権側(とその仲間たち)の見解や主張ばかりであり、TPLF側の主張やアビィ政権に反感を抱く勢力側の情報が伝わらないため、なかなか実情が掴めないのが事実です。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 性暴力や拷問、虐殺も。タリバン報道の裏で進行するアフガン以上の悲劇
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け