性暴力や拷問、虐殺も。タリバン報道の裏で進行するアフガン以上の悲劇

 

そして、その背後には、利害関係者として中国がしっかりとついているという図式が出来上がっており、ティグイレ紛争に加えて、国境を越えた地域紛争に向けた緊張が高まっています。

この案件の調停プロセスに関わる機会をいただいていますが、見えてきたのはエジプトとスーダンの主張をアメリカがサポートし、エチオピア政府の主張を中国がサポートするという、ここでも米中の代理戦争の様相が出てきていることです。

ゆえに米中政府は調停役には使えず、今、地域大国のケニアを仲裁役に立てることにしていますが、これがまた地域の勢力バランスに微妙な影響を与えることになってきました。

Horn of Africaそして東アフリカの地域は、これまでにも紛争を繰り返し、多くの悲劇を経て、今、地域諸国間で非常にデリケートなバランスで共存の体制が出来ています。特にスーダン紛争後、スーダンと南スーダンに分離してからは、新たな紛争を控えようとの暗黙の了解が出来上がっていたのですが、それをエチオピア政府が昨年11月に崩し始めたと、東アフリカでは考えられ始めています。そして、その背後に、米中という、2大覇権国がついており、より情勢を複雑にしているように思われます。

今のところ、ティグレイ紛争を除けば、目立った武力紛争には至っていないのですが、グレート・ルネッサンスダム問題、ティグレイ紛争によりスーダンに流入した難民の扱いをめぐるスーダンとエチオピア政府との間にある緊張と、それに加わるエリトリアという構図は、いつ地域における紛争としてドミノ倒しのように広がってもおかしくないほどの状態になってきていると思われます。

この地域で、大きな尊敬を集め、かつ比較的にバランスが取れていると考えられているケニアによる仲裁・調停が不発に終わった場合、いつ地域が再度混乱に陥り、それがアフリカ諸国や対岸にあるアラビア半島に伝播してもおかしくない状況に思えます。

サウジアラビア王国やUAEなどもそれをよく理解できているのか、再三、エチオピア政府に対して、情勢の安定化と即時停戦、平時の回復を求めていますが、
アビィ政権側の頑なな姿勢(TPLF憎し)の前に大きな成果を収めることが出来ていません。

アメリカも制裁を発動し、中国は内政不干渉の法則を盾に、積極的な介入はしませんので、国際レベルでの大きな図式からの解決も期待薄と思われます。

そのような状況下で、エジプトとスーダン、エチオピア(とエリトリア)を交えた“別の”武力紛争が起きる可能性が出てきている今、アフリカ・中東・欧州などを巻き込んだ国際紛争と混乱への緊張が高まっています。

アフガニスタン情勢の混乱が中央アジア・コーカサス、イラン、トルコなどを巻き込んだ緊張状態を生み出していると時を同じくして、東アフリカ、北アフリカ、中東諸国、地中海沿岸諸国などを広く巻き込んだ別の緊張と混乱が生み出されています。

そのどれかがバランスを崩して、戦争に発展した暁には、国際情勢におけるガラガラポンが起きる可能性は否定できないと懸念しています。

そのきっかけとなり、そして今後の緊張緩和の可能性を秘めているのが、エチオピアで繰り広げられるティグレイ紛争をめぐる情勢だと思います。

関係者がすべて体面を守るために拳を振り上げている状態で、なかなか解決の糸口が見つからないのですが、緊張の緩和に失敗してしまうと、おそらくHorn of Africa発の大混乱が引き起こされるような気がしてなりません。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 性暴力や拷問、虐殺も。タリバン報道の裏で進行するアフガン以上の悲劇
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け