コロナ婚活の闇。彼との「デキ婚」直前に女性が失った貯金、仕事、小さな命

 

結婚式のキャンセル料も負担。そして選択した「中絶」の手術

美玲さんは彼と縁を切ることを決断したのですが、解決しなければならないのは気持ちの問題だけではありません。まだお金の問題が残っていました。 

例えば、彼女の場合、直前になって結婚式、二次会、新婚旅行を取りやめたので、30万円近いキャンセル料が発生。彼が結婚業者、旅行業者への連絡をせず、また彼が業者からの請求を無視したため、この費用も美玲さんが負担することに。

さらに美玲さんに突きつけられたのは「命の問題」。当時の彼女は妊娠3ヵ月。筆者は「1人で育てていく選択肢もある」とアドバイスしましたが、すでに彼女の気持ちは決まっている様子でした。それから1週間後、彼女は「妊娠」の診察を受けた産婦人科の病院で、今度は「中絶」の手術を受けたのです。やはり、嫌いな男性の子供を産んで育てていく気持ちにはなれなかったようです。

後日、彼女から一通のLINEが届きました。術後は実家に戻り、彼とは連絡をとっていない模様。今も中絶の後遺症に悩み、その影響で1日2、3時間しか眠れない日が続いているといいます。そして食事がとれる日、とれない日が交互にくるとのこと。彼女は12キロも体重を減らし、急激にやせ細りました。まだ仕事には復帰できていません。

LINEの最後には、こう書いてありました。「後から知ったんですが、彼の一家はみんな離婚しているようです。両親のことは知っていましたが、兄弟、従妹、伯父さんまで……なんでもっと早く気付かなかったんでしょう」と。

別れ際に味わった悔しさや失望感。それは今でも、まだ彼女の中で尾を引いているのです。なぜなら、彼女が婚活で失ったものは、もう取り返しがつかないものだからです。彼女が社会人になってから今までに築き上げ、そして今回の結婚で一気に失ったものの一覧です。 

  • 30万円(結婚式等のキャンセル料)と50万円(子供のための貯金)
  • 結婚するときに買った家財一式
  • 新卒で就職し、10年間も勤めてきた正社員としての仕事と安定した収入(化粧品会社の総合職で、年収500万円)
  • 人生で一番大事な時間を過ごす幸福感
  • この世に産まれてこなかった小さな命

あくまで仮の話ですが、もし美玲さんが出産に踏み切っていたら、どうなっていたのでしょうか?

母子家庭の平均所得はわずか243万円。子どもを抱えているのに生活保護の基準を下回るという地獄絵図です。だからといって子供の父親からの養育費も当てになりません。

現在、養育費をもらっている母子家庭は全体のたった24%ですが、それもそのはず。美玲さんの彼はギャンブル性で金使いが荒く、金銭感覚に問題があります。さらに美玲さんの方から別れを切り出した手前、彼と連絡をとり、養育費の金額を約束させ、毎月きちんと払わせるのは相当難しいでしょう(統計値はどちらも平成28年の全国ひとり親世帯等調査)。

つまり、美玲さんが後先を考えず、彼に内緒でこっそりと出産しても、お先は真っ暗だったのです。  

婚活は「少子化対策」という大義名分があるので、批判の対象になりにくいのが現状です。そのため、一瞬の気の迷いから、すべてを失う危険と隣り合わせであることは意外と知られていません。特にできちゃった婚の場合、産むも地獄、堕ろすも地獄。婚前交渉(結婚する前に肉体関係を持つこと)にはくれぐれもご注意ください。

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露木幸彦この著者の記事一覧

行政書士の露木幸彦が夫婦の離婚、不倫、未婚出産、婚活の法律、交渉術、会話技術を解説明石家さんまさん司会のホンマでっかTV,ブラマヨさん司会の世界のこわ~い女たち、小倉さん司会のとくダネ、バナナマン設楽さん司会のノンストップなどに登場。11冊の著書を持ち累計部数は
5万部を突破。日本経済新聞、朝日新聞電子版では連載を担当。開業から16年で相談2万件の実績。

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【著者】 露木幸彦 【発行周期】 ほぼ 月刊

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