元国税が指摘「日本の富裕層はフリーターより税金を払っていない」不都合な事実

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先日掲載の「これも小泉・竹中“カネ持ち優遇”の一環。日本から『長者番付』が消えたワケ」等の記事で、富裕層ばかりが厚遇される日本社会の不平等さを非難し続けてきた、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。大村さんは今回、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、「日本でもっとも税金を払っていないのは富裕層」と断言しその証拠を列挙。斯様な歪んだ税制が、昨今日本で進む急激な格差社会化の大きな要因になっていると強く批判しています。

【関連】これも小泉・竹中“カネ持ち優遇”の一環。日本から「長者番付」が消えたワケ

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の2021年9月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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金持ちの税負担はフリーター以下

実は今、日本でもっとも税金を払っていないのは富裕層です。こういうことを述べると

「日本の金持ちは決して優遇されてはいない」
「日本の金持ちは世界でもトップレベルの高い税金を払っている」

と反論する人もいるでしょう。インターネットの掲示板などでも、日本の富裕層は世界一高い所得税を払っている、というような意見をよく目にします。

しかし、これはまったくデタラメです。確かに、日本の所得税の税率は、世界的に見て高いです。しかし、これには、カラクリがあります。日本の富裕層の所得税には様々な抜け穴があって、名目税率は高いのだけれど、実質的な負担税率は驚くほど安いのです。むしろ、日本の富裕層は先進国でもっとも税金を払っていないといえるのです。

日本の税制では、富裕層の最高税率は50%です(所得税と住民税を合わせて)。最高税率50%というのは、先進国ではトップクラスであり、これだけを見れば日本の金持ちはたくさん税金を払っているように見えます。しかし、日本の金持ちの場合、税制に様々な抜け穴があり、実質的な税負担は欧米の先進国よりもかなり低いものとなっています。

というより、日本の超富裕層の実質的な税負担は、なんとフリーターよりも安いのです。下の表は、年収5億円の配当収入者と年収200万円のフリーターの実質的な税負担の比較です。配当収入者というのは、大企業の株などをたくさん持ち、多額の配当などを得ている人のことです。富裕層の多くはこういう形で収入を得ています。

年5億円配当収入者と年200万円フリーターの税負担の比較

 

         配当収入者  フリーター
所得税・住民税   約20%    約6%
社会保険料     約0.5%     約15%
収入に対する消費税 約1%     約8%
合計        約21.5%   約29%

これを見ると、富裕層はまず所得税、住民税自体が非常に安いことがわかるはずです。高額所得者の名目上の最高税率は50%なのですが、配当所得者は約20%なのです。日本には、配当所得に対する超優遇税制があります。配当所得は、どんなに収入があっても所得税、住民税合わせて一律約20%でいいことになっているのです。平均的サラリーマンの税率とほぼ同じです。

これは、配当所得を優遇することで、経済を活性化させようという小泉内閣時代の経済政策によるものです。先ほど述べましたように、富裕層の収入は持ち株の配当によるものが多いのです。だから富裕層の大半は、この優遇税制の恩恵を受けているのです。

また配当所得者に限らず、「経営者」「開業医」「地主」など富裕層の主たる職業ではだいたい税金の大きな抜け穴が用意されています。名目通りの高額の税率を払っている富裕層はほとんどいないといっていいのです。

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