自民・岸田文雄氏「危機管理の要諦は備えること」発言の大間違い

240667001_1906697609498491_7000031978805184044_n
 

菅首相の総裁選不出馬宣言により、新総裁の座を巡る動きが活発化しています。多くの候補者の名前が上がっていますが、目下の課題はやはりコロナ対策。国のリーダーとなる人物が危機管理についてどう考えているかは重要な問題です。メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストで危機管理の専門家でもある小川和久さんは、今回いの一番に立候補の意思を示した岸田文雄前政調会長が語る「危機管理の要諦」について「この人も理解していない」と主張。岸田氏に限らず日本の政治家が陥る“論語読みの論語知らず”を嘆いています。

危機管理の要諦は「備えること」ではない

菅義偉首相の退陣表明を受けて、有力政治家の立候補が噂されています。9月4日の段階では、岸田文雄・前政調会長、高市早苗・前総務大臣、河野太郎・ワクチン担当相、石破茂・元幹事長、野田聖子・幹事長代行、下村博文・政調会長の名前が下馬評に挙がっています。そのうち有力視されているのは岸田さんです。

岸田さんは9月2日にいち早く記者会見で政策を打ち上げました。それなりに準備してきた印象です。しかし、気になってならないことがあります。岸田さんが必ず口にする「危機管理の要諦は最悪の事態に備えること」という言葉です。

これを聞くと、「あー、この人も危機管理を理解していない」と落胆せざるを得ません。この「最悪の事態に備える」という言葉は、「危機管理」という日本語訳の生みの親であり、その概念を日本に普及させた功労者である故・佐々淳行さんが最も強調していたことです。

しかし、多くの「佐々教」の信者が論語読みの論語知らずに陥っているのが現状で、草葉の陰で佐々さんも嘆いているのではないかと思います。最悪の事態に備えるというのは当たり前のことです。そして危機が発生したときどうするのか。そこが最も重要な点です。それを考えたとき、危機管理の要諦が「必要なことを適切なタイミングで行うこと」にあることがわかるはずです。最悪の事態への準備は、そこで初めて生きてくるのです。

呪文のように「最悪の事態に備える」と唱え続けていても、「必要なことを適切なタイミングで行う」ための訓練を重ね、それを実行できるように法制度まで完成度を高めておかなければ、畳の上の水練と言わざるを得ません。

日本の危機管理は、政府も企業も総じて畳の上の水練に終始しており、だからコロナ対策でもアフガンからの関係者の退避でも後手を踏み続け、列国のような動きをできないのです。コロナについては結果オーライのような自己満足ばかりで、先が思いやられる昨今です。

岸田さん以外の人たちも、全員が同じ問題を抱えています。よくても佐々さんの本を上っ面だけ読んだだけか、危機管理などできない官僚に全面的に依存する形だからです。このコラムの指摘に耳を傾ける候補者であれば、その人は日本のリーダーになる資格を備えていると思うのですが、ムッとするような顔ばかりが目に浮かんでなりません(笑)。(小川和久)

image by: 岸田文雄 - Home | Facebook

小川和久この著者の記事一覧

地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料お試し登録はこちらから  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 NEWSを疑え! 』

【著者】 小川和久 【月額】 初月無料!月額999円(税込) 【発行周期】 毎週 月・木曜日発行予定

print
いま読まれてます

  • 自民・岸田文雄氏「危機管理の要諦は備えること」発言の大間違い
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け