報復が報復を呼ぶ悪循環。9.11と湾岸戦争を招いた米ブッシュ父子の罪と罰

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今年9月11日で発生から20年を迎え、様々な面から検証がなされたアメリカ同時多発テロ。しかしながら少なくとも日本では、史上最悪のテロを引き起こしたそもそもの原因に迫る報道は見受けられませんでした。そんな中にあって事件の「真相」に鋭く迫っているのは、メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』の著者でジャーナリストの高野孟さん。高野さんは今回、米国識者による論説や著書の内容を引きつつ9.11テロを招いた要因を分析・解説するとともに、その後アメリカが重ねた迷走を強く批判。その上で、錯乱する米国に対する国際社会からの「介護・治療」の必要性を説いています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年9月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

世界史的な物差しで計った「9.11からの20年」/「冷戦後」への不適応を起こしている米国に国際協力による介護・治療を

歯切れの良い論説で人気のあるジャーナリスト=ミシェル・ゴールドバーグが9月11日付「ニューヨーク・タイムズ」に、「ビン・ラーディンはいかにして勝利したか」と題して要旨こう書いている。

▼アル・カイーダは〔9.11同時多発テロの〕大勝利の直後に崩壊した。しかし9.11が米国に与えた打撃は、多くの悲観論者が予想したよりもずっと深刻だった。あの攻撃、そしてそれへの我が国の対応が、衰退期への道を開いた。それによって米国は「品格も何も失って半狂乱になりながら消え去ろうとしている大国」という今日の姿へと至ったのである。アメリカは、ムスリム世界に民主主義を植え付けようとするという、世界中で不信を買うような“聖戦”を発動し、その結果、自分自身の民主主義をボロボロにしてしまった。

▼今日、アル・カイーダは再建され、20年前よりも遥かに大きな組織となった。そして、2021年9月の米国はと言えば、全くもって最悪の状態にある。20年前には我々は、人を信じやすく、〔それゆえにしばしば〕ドジを踏んだりする〔善良なる〕米国人だった。が、今や我々は不機嫌で、疑い深く、はっきりした考えも持っていない。

▼ブッシュ子は2003年に「自由の前進はこの時代の使命であり、我が国の使命である」と言った。しかし、攻撃的な対外強硬策、人種差別、膨らむ被害妄想、拷問、秘密監獄、〔心が〕壊れた兵士たち、死んだ市民たち、そして打ち砕かれた帝国の夢……等々によって、自由は、世界全体でも我が国内でも、どこか後ろの方に置き去りにされてしまった。

▼スペンサー・アッカーマンは近著『テロルの支配/9.11時代はいかに米国を弱体化させトランプを生み出させたのか』で、9.11の後にこの国を覆い尽くした狂気と、ムスリム移民を入国させないと公約して大統領になった人物の登場とは繋がっていると述べている。

▼我々は、傲慢にも世界を作り変えるための戦争を発動し、推計8兆ドルを費やしたというのに、結局、作り替えられてしまったのは自分の方だった。9.11のあの日、我々は何が失われたのか分かっていると思ったのだが、実は何も分かっていなかったのだ……。

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