トランプと同レベル。バイデン「米国ファースト外交」の迷惑千万

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前任者が破壊し尽くした世界秩序の回復は、現職大統領に望むことも厳しいようです。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』では著者でジャーナリストの高野孟さんが、就任から1年足らずの間にバイデン大統領が次々と犯した外交上の失敗を列挙し、各々について詳細に解説。その姿勢を「トランプ前大統領と同様の米国ファースト」と批判的に記した上で、失敗続きのバイデン外交の根本原因を探っています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2021年9月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

何をやってもドタバタして失敗続きのバイデン外交/その根本原因はどこにあるのか?

バイデン米大統領の外交がドタバタの連続で、世界中に大迷惑を及ぼしつつある。

第1に、前後左右の気配りも目配りもなしにほとんど衝動的に強行したアフガニスタンからの撤退である。

そもそもやるべきでなかった戦争であり、そのために最初から達成すべき戦略目標が何なのか誰も理解しないままに始めてダラダラと20年間も続けてしまった戦争であるのだから、期限を決めて「エイ、ヤッ」と撤退を決断したのは、偉いと言えば偉い。しかし、どんな物事にも縦糸と横糸があり、少し複雑なことになれば斜め糸もあったりして、その脈絡関係を慎重に見極め、それらを全体として俯瞰して3次元方程式をどこにも落ち度がないように解を求めていくのが政治であり外交というものだろう。

一夜で崩壊した米国製「アフガン政府」

米国自身の歴史的経緯を縦糸に例えるならば、オバマもトランプも、ブッシュ子が発動したこの馬鹿げた戦争を止めにしたいと思ったけれども叶わなかったのは、米軍侵攻でタリバン政権だけでなくアフガニスタンの国体そのものを破壊してしまい、その跡に「米国式民主主義」に基づく新国家を建設して差し上げようと思ったところが全然上手く行かなくて、引くに引けなくなったからである。

だから、問題の争点は「引くか引かないか」ではなく、「引いたとしても米傀儡の『アフガン政権』は何とか自分の足で立って、タリバンとの難しい交渉に立ち向かうことができるか」にあった。バイデン政権の判断は、

  1. 「アフガン政権」は少なくとも3カ月は持ち堪え、タリバンとの交渉に当たるだろう
  2. タリバンもいきなり首都を武力攻撃したりせずに政権側との交渉に応じるだろう

――というものだったが、実際には、ガニ大統領は逃亡し「アフガン政権」は一夜にして崩壊した。

結局のところ、米国のホワイトハウスも軍部も国務省も情報機関も、アフガンで何がどうなっているかを全く把握していなかったというこの元超大国の惨状には、呆れるばかりである。その結果、あとは野となれ山となれという究極的な無責任を演じてしまった。

こんな、撤退というより逃亡というべきやり方であるならば、前任者たちの誰でも実行可能であったろう。たぶんバイデンは「オバマもトランプも、断固やり遂げる勇気がなかった。私は奴らとは違うぞ。決断できる大統領なんだ」とでも考えたに違いないが、それは前後の脈絡に目を瞑った余りに乱暴な猪突猛進でしかなかった。

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