トランプと同レベル。バイデン「米国ファースト外交」の迷惑千万

 

中国と一体どういう関係を築きたいのか

バイデンの外交的ドタバタの第3は、突然のオーカス(AUKUS)結成とそれに関連して豪州がフランスと契約して進めてきた潜水艦建造計画を米国が横取りした事件である。

オーカスとは、豪州のA、英国のUK、米国のUSを繋げた造語で米英豪の3国による対中国の軍事同盟。これとすでに発足している日米豪印のクワッドによる「自由で開かれたインド太平洋」協力を重ねれば、英語圏の3カ国を中核とし日印を両脇に従えた「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」あるいは「PATO(太平洋条約機構)」の骨格が出来上がり、これを武器として「民主主義vs専制主義」の決戦に挑む――というのがバイデンの世界観なのだろう。

しかし、旧ソ連を敵とした冷戦構図を中国相手の新冷戦構図に焼き直しただけこの発想はまるで時代錯誤だし、中国の軍事力が東・南シナ海からインド洋・太平洋まで溢れ出して米国の覇権が脅かされるというのも、冷戦時代の「共産主義によるドミノ倒し」理論と同じ誇大妄想である。

これに関してバイデンが語っていることは、ほとんど精神分裂的で、21日の国連総会での演説では、アフガン戦争を終わらせたことを実績として誇りつつ「世界のあらゆる問題の解決に武力を使用してはならない」と、まるで日本国憲法第9条のようなことを言い、さらに米中対立が「新たな冷戦に繋がることは望まない」とも述べた。それが本当ならクアッドもオーカスもないだろうに。中国はもちろん世界も、このバイデン発言をどう受け止めていいのか分からない。

説明に窮した米外交評論家の中には、「軍事は対決、経済は競合、気候変動は協力の3層を使い分けるのだ」と言う者もあるが、そんな器用なことは誰だってできるはすがないし、ましてやバイデンには全く無理である。

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