トランプと同レベル。バイデン「米国ファースト外交」の迷惑千万

 

子供7人を含む民間人10人を誤爆

ドタバタの第2は、米軍撤退作業中の8月29日に実施した「IS-K(ISホラサン州支部)のテロリストの拠点」を狙った無人機による爆撃が全くの誤爆であったこと。それこそ米国系慈善団体の現地職員だったアフガン人男性と子供7人を含むその家族がむざむざと殺された。

同25日にカブール空港近くで起きたIS支部による自爆テロで米軍兵士を含む170人が死亡する事件があり、米軍が警戒を強めていたが、その男性が勤務先で飲料水の大きなポリタンク2つを車のトランクに積み込んだのを「爆発物」と断定、彼が自宅に帰り着いて子供たちが玄関口に迎えに出たところに爆弾をブチ込んだ。

9月に入ってから米メディアが次々に報じ、17日に至って米中央軍のマッケンジー司令官が誤爆と認め謝罪した。しかしこれはインテリジェンスのちょっとした失敗で済まされる話ではない。

バイデンは8月31日の米軍撤退完了を宣言した演説の中で、次のようにも述べていた。

「しかし、テロの脅威が続くことも理解している。それは有害で邪悪な性質のもので、ほかの国にも広がっている。我々の戦略も変わらなくてはならない。我々はアフガニスタンや他国での対テロ戦を継続する。そのために地上戦は必要ない。我々は『オーバー・ザ・ホライゾン』(OTH)能力、つまり米兵を派遣せずにテロリストの標的を攻撃する能力を持っている。米兵の派遣はほとんど必要ない」

つまり、地上戦は止めるので米兵はほとんど派遣しないけれども、遠隔地からテロ容疑者を監視し無人機などで爆殺する形の「対テロ戦争」は継続すると宣言している。逆に言えば、このOTH能力の高さに自信があるからこそ地上軍をさっさと撤退させても大丈夫なんだという説得の理屈でもある。その最初のデモンストレーションとして実施されたのが、27日夜のナンガルハール州内に潜むIS-K幹部2人の爆殺と、この空港近くの拠点爆破だった。

前者は成功し、民間人の被害はなかったと発表されたが、いくら相手がテロリストだと言っても、裁判もなしに米国が一方的に断定し、他国の領域に無人機などを侵入させて路上で殺害するなどということが、国際法的にも人道的にもなぜ米国には許されるのか。ましてや後者は無残な失敗で、司令官が謝罪し賠償金を支払うと約束すれば済むというだけの話なのか。米兵の命は惜しいけれども他国人の命はそれほど惜しくはなく「ご免」で済ませられるという米国の相変わらずの身勝手に、世界はうんざりしている。

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • トランプと同レベル。バイデン「米国ファースト外交」の迷惑千万
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け