リストラの実態
同社の「特別キャリアデザイン」の内容を正確に知っている訳ではありませんが、多くの企業で導入されている再就職支援。私の会社も2000年代に金融業界クライアント中心に、リストラプログラム導入に関与しました。
当時多くのリストラは「割増退職金か再就職支援か」の択一で、自ら進路を選び、まだ退職金を割増しで払える今の内に辞めておいた方が得、という説得が主でした。現状のまま多くは業績改善もない場合、割増しどころか、倒産すれば退職金も支払えなくなるかも知れないのであれば、早期退職は会社にも社員にもメリットはあった訳です。
残念ながら割増し退職金無し、再就職支援すら無しという中小企業も少なくありません。大企業でも倒産が見えてくる状況であれば同じでした。退職金すら払えないということもあります。
難破船から逃げるネズミ
難破する船から真っ先に逃げるのは人ではなくネズミと言われます。リストラを行うと、元来リストラで排除したいとされる社員より、将来を嘱望される人から応募があるのも常なのです。
なぜでしょう。
ネズミが野生の勘なのかどうかわかりませんが、目端の利く人は自社の経営状況についても油断せず日頃から客観的に理解しているのだと思います。逆に早期退職ではなく、会社からの退職勧奨でリストラ宣告されるようなタイプの人は、そもそも自社の社内政治などには詳しくとも、業績や業界状況などほとんど無頓着な場合が多いのです。まして新卒で自社一筋しか職場を知らないため、そもそも転職ということ自体、具体的に考えたり行動したことが無いという例が圧倒的です。
将来を期待される社員はプロパーであっても常時自社と他社、業界や景気など外にも目を配り、くだらない社内政治などではなく常に自分の勝負が外だということをわかっているので、結果として人材バリューの高い、「他社でも売れる人材」となることが多いのです。
パナ社長の誤算???
そうした優秀な社員から早期退職応募があったと嘆くパナ社長は誤算だったのでしょうか?
私は、すべてお見通し、想定の範囲内だったと見ています。天下のパナソニックで社長にまでなる方が、そんなことを想像していなかったとすれば、同社は直ちに潰れるのではないかと思います。
そうではなく、せっかく自ら退職という政策に賛同してくれた人に、いかにトラブルなくスムーズに退出していただくかと考えた時、「辞める人は無能では無く、貴重な人材」というメッセージを送ることは、優れた経営者なら必然な態度だと感じます。
真相を知っている訳ではありません。ただリストラ計画というものは人間心理を考え抜いて作られます。本当の意味で事業・組織の再構築を図るパナソニックは、少なくとも企業としてはさすがにやるな、という印象を持ちました。
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