他に必要な土地は草原である。草は農耕に欠かせないウシの冬季の食料として、夏の間に刈り取られ干し草として蓄えられた。茅葺屋根に必要なススキなどは晩秋に取り入れられ次の春まで乾燥させた。草原の面積も、集落のウシの頭数と、茅葺屋根に必要な茅の量によって決まっていた。無闇に草原を大きくするより、他の用途に使った方が効率がいいからだ。
集落の立地条件によっては他に、養蚕用のクワ畑、果樹園、茶畑などがあり、余った土地にはカブなどの野菜を植えた。自給自足で生き延びるための装置がすべてそろっていたのが里山だということが分かる。しかし、1960年代に起きたエネルギー革命の結果、薪炭林は不要になり、農耕機器の導入により農耕用の牛も不用になり、自給自足で支えられてきた里山は崩壊した。
かつての里山環境にはCO2削減・温暖化防止という美名のもとに、太陽光発電のパネルが並んでいるところも多くなった。しかし、太陽光パネルを造ったり設置したりするためにも、あるいは使用済みになったパネルを処分するにもCO2が排出される。薪炭林が大規模に伐採されれば、CO2は吸収されなくなる。果たして、これらのCO2の増加に見合うCO2の削減が太陽光発電に期待できるのだろうか。政府は野放図に太陽光発電を進めるだけで、収支計算をしたという話は聞かない。人為的地球温暖化の防止もSDGsと同じように怪しい話が多すぎる。(『池田清彦のやせ我慢日記』2021年10月8日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください)
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