経営とオーケストラの指揮の「共通点」はドラッカーが教えてくれた

 

まず、しなければならないのは“感動を与える作品(ミッション)”づくりで、シンフォニーにおいては「音楽スキル」を必要とするのですが、マネジメントにおいては“信念、志”あれば誰もができることです。たとえば「ホンダのスーパーカブ」を作曲したのは藤澤武夫さんで、本田宗一郎さんの総指揮によって大ヒット作品として演奏されました。

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スティーブ・ジョブズの場合では、あったのはハチャメチャな創作意欲とそれを実現しようとする手段を択ばない実践でした。特別に優秀な演奏者(技術者)を集めて、自身の曲を演奏させたのです。失敗と混とんを巻き起こしながら、ときに思いもよらない新曲が演奏されて、聴衆に絶賛されて演奏会は大成功ともなりました。

ここで付言しますが、要求水準がスバ抜けて高く、週に90時間も働かせて、気に入らなければ首だとさえ脅すのに、選りすぐって集めた技術者に支払われた報酬はいえば、周りより低かったのだそうです。彼らが、ジョブズの過酷な作品作りに参画したのは、その作品が「宇宙にへこみを作る」とする遠大な構想の困難性が魅力だったからです。

ここでは事業を演奏に譬えているのですが、常に評価するのは顧客(聴衆)であり、音楽に飢えいるときは聞くだけで満たされるのですが、ふんだんにあふれかえっていれば要求するものは高くなるばかりです。たとえば「たい焼き」一つにしても、尻尾まで程よく美味な餡が詰まっていなければ、ひいきにしようとはしないでしょう。

現在は、世界競争の中で多様な音があふれかえる時代になっています。けれど、音が乏しかった時代から事業を行ってきたほとんどの企業では、過去のヒット曲を頼りにし、それも惰性的に指揮、演奏するのでは、豊かになり嗜好も変化した聴衆に満足を与えるなどできないでしょう。革新できない大企業では、満足できる演奏ができなくなっています。

今日のグローバル化した時代、より選択肢が多くなった聴衆(顧客)は、より新鮮で異質で感動できる音楽(効用)を求めています。大いなるビジョンをもつ新たな者にこそ、多くの機会が与えられます。

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【著者】 浅井良一 【発行周期】 ほぼ週刊

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