経営とオーケストラの指揮の「共通点」はドラッカーが教えてくれた

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『マネジメント』で知られるドラッカーは、経営者の役割を指揮者に例えたそうですが、それはどういう理由からだったのでしょうか。今回のメルマガ『戦略経営の「よもやま話」』では、著者の浅井良一さんがドラッカーの言葉の真意を、世界的に有名な二名の指揮者、カラヤンとフルトヴェングラーから読み解きます。

革新するマネジャー 指揮者の役割

ドラッカーは“マネジャーの役割”についてこのように言っています。

部分の和より大きな全体、すなわち投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を生み出すことである。それは“オーケストラの指揮者”に似ている。オーケストラでは、指揮者の“行動、ビジョン、指導力”を通じて、各パートが統合された“生きた音楽”となる。

とドラッカーは言っているのですが、ここで皆さんは少し違和感を感じられると思うのですが、それは「“マネジャー”とは何か」ということで、先に言ったように指揮者がそうで、経営者はトップ・マネジメントだと言うと分かってもらえるかと思うのですが、調和ある目標を達成するために、複数の人の働きを“統合する人”です。

ドラッカーは、経営者の役割を「個人が奏でるパート(音)を統合させて“生きた音楽”となす指揮者」に譬えられるとしているのですが、これは事業は“生きた音楽”そのものであり、そこでどのように聴衆に感動を与えるのかを「ヘルベルト・フォン・カラヤン」と「ヴィルヘルム・フルトヴェングラー」から読み解きます。

<カラヤンは、どうだったのか>

「彼には彼特有の“美学(美意識)”があり、またそれに対しての徹底的な追求と執着があり。自身の求める響きが出るまで辛抱強く楽団員を“説得”していた」というのがカラヤンのスタイルだったそうで、演奏者によると「これほどまでの音楽的充実感、正確性を追求できたことはいまだかつてなかった。われわれは世界中のどのオーケストラにも優る、重厚で緻密なアンサンブルを手に入れたのだ」と言います。

ヘルベルト・フォン・カラヤン(Wikipedia)

<フルトヴェングラーは、どうだったのか>

「“濃厚な官能性と、高い精神性”と、その両方が一つに溶け合った魅力でもって聴き手を強烈な陶酔にまきこんだ」

そのスタイルは「作曲家がその深層心理の混沌を形象化していく作曲の過程を追体験し、あたかも作曲家自身の即興演奏のごときものであって、演奏はテンポの変化がものすごく顕著であるにもかかわらず、その移行部には自然さが感じられる」と自由性があったとします。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(Wikipedia)

二人の指揮者について調べたらこんな解説があったのですが、実体験のために二人の「ベートーベンの第五」を聞いてみたのですが、不案内な私でも、なんとなく納得させられるものがありました。良いものは良いものであり、企業の目的である「顧客の創造」の実現のため「美的精神性をもって指揮する」のが名経営者の役割です。

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